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製品の品質だけじゃない!現代における「品質」の多角的な捉え方

「品質」と聞くと、あなたはどんなことを思い浮かべますか?

「壊れにくい」「丈夫」「長持ちする」といった、製品そのものの性能や信頼性をイメージする方が多いかもしれません。しかし、現代の品質管理では、この「品質」の概念が大きく広がり、多角的な視点から捉えられています。

今回の記事では、製品の枠を超えた「品質」の多面的な側面について、その広がりや種類、そして重要性について解説していきます。

顧客の「満足」を超えて「価値」を提供する品質

品質とは、単に製品が仕様通りに作られているかどうか、という静的な基準ではありません。それは、顧客の要求をどれだけ満たし、さらには期待を超えることができるかという、動的で多岐にわたる概念です。

顧客価値の実現

品質管理の最終的な目的は、顧客の要求を満たし、顧客満足(CS:Customer Satisfaction)を実現することです。さらに言えば、顧客がその製品やサービスから得られる**「顧客価値」**を実現することにまで、品質の概念は広がっています。

「官能特性」と「代用特性」

顧客が求める品質には、ゲームの操作性やグラフィックといった、人間の感覚で直接感じられる官能特性があります。しかし、中には直接測定するのが難しい品質もあります。その場合は、代わりに測定しやすい代用特性を特定し、その品質を確実に満たすことが重要です。

「プロダクトアウト」と「マーケットイン」

最新技術を優先して開発者の視点でゲームを作ることをプロダクトアウトといいます。これは、ゲーム会社A社のハードウェア開発に代表されます。

一方、利用者が求めているものを起点にゲームを作ることをマーケットインといいます。これは、ゲーム会社A社のソフトウェア開発に代表されます。

現代の市場では、マーケットインの考え方が不可欠です。ユーザーのニーズを無視してゲームを開発すると、どんなに優れた技術を使っても、消費者に受け入れられない可能性があります。

経営全体を包含する「QCD+PSME」

品質は、経営の重要な目標とも密接に結びついています。従来の品質(Q)、コスト(C)、納期(D)の3要素だけでなく、現代の品質管理では、**生産性(P)、安全(S)、士気(M)、そして環境(E)を含めた「QCD+PSME」**という広い範囲で品質を捉えます。この考え方では、品質は他のどの要素よりも優先されるべきものとされています。

品質と原価の関係

いくら品質の高い製品でも、原価が高すぎると企業の利益は上がりません。逆に、原価に見合わない高い価格設定では、顧客は購入をためらいます。

品質を高めつつも、原価を適切に管理する努力が事業には不可欠です。


見えにくい部分に宿る品質の分類

品質は、その捉え方や目的によって、さらに細かく分類することができます。

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計画の品質 vs. できばえの品質

製品やサービスには、私たちが**「ねらいの品質」と呼ぶ、企画や設計の段階で目指す理想の品質があります。そして、実際に生産や提供を通じて実現されるのが「できばえの品質」**です。品質管理では、この二つの品質をいかに一致させるかが重要になります。

顧客を感動させる「魅力的品質」

顧客満足度を向上させる品質には、2つの種類があります。

  • 当たり前品質: 満たされて当然だと顧客が考える基本的な品質です。例えば、スマホの通話機能が正常に使えることや、画面がフリーズしないことなどがこれにあたります。
  • 魅力的品質: 顧客が予期していなかったにもかかわらず、実現されると感動や満足をもたらす品質です。例えば、スマホのバッテリーが想像以上に長持ちしたり、使いやすいデザインだったり、というような競争優位性につながる品質です。

また、品質には**「使いやすさ」「デザインの美しさ」といった、数値では測りにくい「感性品質」**も含まれます。


製品から社会へ。品質の対象範囲の拡大

現代の品質の概念は、製品そのものだけでなく、サービスや組織全体、そして社会全体にまで広がっています。

業務・プロセス全体の品質

ゲーム会社A社では、ハードウェアを製品の品質、ソフトウェアをサービスの品質として分けて考えています。しかし、どちらも最終的な目標は顧客の満足です。この「顧客が最終的な品質評価を行う」という考え方は、**「後工程はお客様」**という言葉に集約されます。

この言葉は、製造工程だけでなく、組織全体のあらゆる仕事に当てはまります。たとえば、ある部門が作成した資料が次の部門の仕事に引き継がれるとき、その資料は次の部門にとっての「商品」であり、次の部門は「お客様」です。このように、組織内のプロセスの質を高めることは、最終的な顧客満足につながるのです。

やサービスは、社内の様々な業務プロセスを経て生み出されます。そのため、最終的な成果物だけでなく、その過程である**「仕事の品質(プロセスの品質)」**も非常に重要です。

品質管理では、後工程(次の工程)を常に「お客様」として捉え、後工程に不良品を流さないという考え方が基本となります。この考え方は、業務全体の品質向上に大きく貢献します。

社会的責任としての品質

品質は、企業と顧客の関係だけに留まりません。製品や企業の活動が社会全体に与える影響も、品質の一部と考えられます。

例えば、製品の安全性環境への配慮といった要素は、**「社会的品質」**として捉えられます。現代の企業には、製品を通じて社会に貢献するという視点も求められています。


品質は、単なる製品の性能ではなく、顧客の期待を超え、経営全体を包含し、さらには社会的な責任にまで及ぶ、広範で奥深い概念です。

製品やサービスを提供するすべての人がこの多面的な「品質」の概念を理解し、日々改善を続けることで、より高い顧客価値と社会貢献を実現できるでしょう。

品質管理の実践 > 品質の定義

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