事業価格管理金融

競争時代における原価設定のパラドックス:コストプラス法 vs. 許容原価

現在、原価管理の分野で最も重要視されている考え方の一つが許容原価です。これは、競争の激しい市場で利益を確保するために、「まず市場価格を定め、そこから目標利益を引いて残りを原価とする」という逆算の発想に基づいて設計原価を決定する手法です。

しかし、この現代的な手法を際立たせるために、ソース(第30章「許容原価の正しい計算方法」)では、対照的な古い考え方としてコストプラス法が提示されています。


コストプラス法とは何か:定義と特徴

ソースにおいて、コストプラス法は**許容原価の考え方と対比される「間違いやすい考え方」**として定義されています。

定義(計算方法)

コストプラス法とは、「実際原価を基準にして利益を足す」計算方法です。 これは、製品の製造に実際にかかった費用(実際原価)をまず確定させ、その原価に企業が確保したい利益を上乗せして販売価格(売価)を決定する、内部志向の伝統的な手法です。

許容原価との対比構造

ソースがコストプラス法を取り上げる最大の目的は、許容原価の優位性を強調することにあります。

  • 許容原価(逆算思考): 売価(市場)から目標利益を引いて原価を決定する。👉 市場志向
  • コストプラス法(順算思考): 実際原価(内部)に利益を足して売価を決定する。👉 内部志向

この「実際原価を基準に利益を足す」という特徴こそが、コストプラス法が持つ根本的な問題点、すなわち「原価ありき」の発想を生み出します。


コストプラス法の深刻な問題点:競争力の欠如

ソースがコストプラス法について言おうとしている最も重要な点は、この発想が**「競争力を失いやすい発想」**であるという批判です。

市場価格との乖離リスク

コストプラス法では、価格設定の起点が自社の内部コストにあります。もし、製造過程で原価が高くなってしまった場合、それに利益を上乗せして決定される売価も当然高くなります。

現代の市場競争では、市場が受け入れる価格(許容される価格)は、競合他社の動向や顧客の需要によって決まります。自社の内部原価が高くても、市場価格はそれに応じて上昇しません。結果として、コストプラス法で設定された価格が市場の許容範囲を超えてしまい、競争において不利になる可能性が高いのです。

コスト削減への意識の低さ

原価を基準に利益を上乗せするという順算の発想は、原価管理の努力が不十分になりがちです。

許容原価では、市場価格という厳しい制約の中で目標利益を確保するために、徹底的なコストダウンが不可欠になりますが、コストプラス法では、原価が高くなっても価格転嫁できるという甘えを生み出しやすく、戦略的なコスト設計を怠る傾向につながります。


結論:避けるべき古い発想

したがって、ソースがコストプラス法について言おうとしているのは、これは許容原価(逆算思考)と対立する古い原価設定方法であり、現代の競争的なコスト設計においては避けるべき発想であるということです。

コストプラス法は、原価を確定させてから価格を決めるという**「原価ありき」の考え方のため、市場や競争に柔軟に対応し、目標利益を確実に確保するための戦略的なコスト設定ができない**という致命的な問題を抱えています。ソースは、この「間違いやすい考え方」を明確に対比させることで、許容原価という逆算発想の重要性を際立たせているのです。

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