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空圧システム徹底解説:仕組みから活用まで

モノづくりの現場や日常の様々な装置で活躍する「空圧(くうあつ)システム」。圧縮した空気の力で機械を動かすこの技術は、その安全性や扱いやすさから多くの産業で不可欠なものとなっています。本ブログでは、空圧システムの基本原理から構成機器、長所・短所までを徹底解説します。

パスカルの原理:空圧システムの根幹

パスカルの原理は、密閉された容器内の静止している流体(この場合、空気)に加えられた圧力は、流体全体に均等に伝わる、という物理学の基本原理です。

この原理により、小さな面積に加えた力を大きな面積に伝え、大きな力を生み出す「倍力作用」が可能になります。空圧(または油圧)シリンダーなどが、この原理を応用して動作の駆動力(推力)を生み出しています。

空圧の長所と短所

空圧システムには、他の駆動源(油圧、電動)と比較して、それぞれメリットとデメリットがあります。

空圧の長所(メリット)👍

  • 安全性が高い: 流体が空気であるため、引火の心配がなく、火災のリスクが極めて低い。
  • クリーン: 流体漏れが発生しても、空気なので周囲を汚染する心配がない(油圧との大きな違い)。食品や医療などの衛生管理が求められる現場に適しています。
  • 構造が比較的簡単で安価: 機器の構造がシンプルで、導入・維持コストが比較的安価に済むことが多い。
  • 扱いやすさ: 誰でも簡単に扱え、配管作業も比較的容易です。
  • 高速応答: 軽量で圧縮性の高い空気を媒体とするため、高速での動作切り替えや駆動が可能です。

空圧の短所(デメリット)👎

  • 力の限界: 油圧システムと比較して、一般的に使用される圧力(低圧)では、大きな力を必要とする作業には不向きです。
  • 圧縮性の問題: 空気は圧縮性があるため、精密な速度制御や位置決め(高精度な停止)には向かない場合があります。
  • 騒音: 排気時に騒音が発生するため、**サイレンサ(消音器)**などの対策が必要です。
  • 圧縮空気の管理: 圧縮空気の生成には電力が必要であり、また、空気中の水分や不純物を除去・管理するための機器(清浄化機器)が必要です。

空圧システムを構成する主要機器

空圧システムは、主に以下の機能を持つ機器で構成されています。

空気圧力源装置(空気を作る)

空圧システムの「心臓」部です。

機器名役割
エアコンプレッサ大気を取り込み、圧縮して高圧の空気(圧縮空気)を生成する。
エアタンクコンプレッサが生成した圧縮空気を一時的に貯蔵し、圧力の脈動を抑える。

空気清浄化機器(空気を整える)

コンプレッサで圧縮された空気には、水分(ドレン)や油分、ゴミなどの不純物が含まれており、これらを下流の機器へ送ると機器の故障や動作不良の原因となります。

機器名役割
アフタークーラー高温になった圧縮空気を冷却し、水分を凝縮・分離する。
エアドライヤ圧縮空気中の水分を取り除き、空気圧機器の錆や不具合を防止する。
フィルタ空気中の固形異物(ゴミ、錆など)や油分・水滴などを濾過・除去する。

空圧調整ユニット(FRLユニット)

現場で利用する圧縮空気の「質」と「量」を調整する機器群です。フィルタ(F)、レギュレータ(R)、ルブリケータ(L)を組み合わせたFRLユニットとして一体化されることが多いです。

機器名役割
フィルタ(F)再度、細かな異物を除去し、機器を保護する。
レギュレータ(R)高い供給圧力を、アクチュエータなどの機器に適した一定の低い圧力(使用圧力)に減圧し、安定させる。
ルブリケータ(L)圧縮空気に微量の潤滑油を霧状にして噴霧し、下流のシリンダーや弁などの摺動部の摩擦を減らし、摩耗を防ぐ。(近年はオイルレス機器も増えており、ルブリケータが不要な場合もある

制御機器(空気を操る)

アクチュエータなどの動きをコントロールする機器です。

機器名役割
方向制御弁(電磁弁)圧縮空気の流れる方向を切り替える(例:シリンダーの前進・後退を切り替える)。電気信号で動作するものが一般的です。
スピードコントローラ圧縮空気の流量を絞ることで、アクチュエータの動作速度を調整する。
圧力制御機器レギュレータ(圧力調整)、リリーフ弁(過剰な圧力を逃がす)など、圧力を制御する。

空気圧アクチュエータ(空気で動かす)

圧縮空気のエネルギーを、実際に仕事をするための運動エネルギー(直線運動や回転運動など)に変換する機器です。

機器名役割と種類
エアシリンダ圧縮空気の力でピストンを動かし、直線運動を行う。一般形、省スペース形、ガイド付形、ロッドレス形などがある。
ロータリアクチュエータ圧縮空気の力でピストンやベーンを動かし、回転運動揺動(スイング)運動を行う。
エアチャック(グリッパ)圧縮空気の力で2本または3本の爪を開閉し、ワーク(物体)を把持(掴む)する。

空気圧アクセサリ(システムを支える)

空圧システムを円滑に機能させるために使われる補助的な機器や部品です。

機器名役割と種類
管継手・チューブ圧縮空気を各機器へ送るための配管部品。ワンタッチ継手などが一般的。
サイレンサ(消音器)制御弁などから排気される圧縮空気の騒音を減衰させる。
圧力計システム内の空気圧力を測定し、適正な圧力が保たれているかを確認する。
圧力スイッチ・センサシステム内の圧力を検知し、電気信号として制御装置へ送る。

まとめ

空圧システムは、クリーンで安全、そして簡便な構造であることから、現代の自動化された製造ラインや産業機械において、広く、そして高速な動作を担う重要な技術です。各機器の役割を理解し、適切に組み合わせることで、効率的で信頼性の高いシステムを構築することができます。

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