私たちの身の回りには、危険物第4類に指定されている「燃えやすい液体」が数多く存在します。その中でも、灯油や軽油など、生活や産業に欠かせない重要な物質が多く含まれているのが第2石油類です。
この記事では、消防法で定められた第2石油類の定義と危険性の位置づけから、代表的な物質の具体的な性質や取り扱い上の注意点までをわかりやすく解説します。
第2石油類とは? 定義と危険性の位置づけ
📌 第2石油類の定義
第2石油類は、引火性液体を分類する危険物第4類の一つとして、以下のように定義されています。
引火点が $21^\circ\text{C}以上70^\circ\text{C}$未満の液体
これは、普段私たちがいる室温(約 20∘C)では引火の危険性が低いものの、少し加熱するだけで引火の危険性が高まる物質群であることを示しています。
🚨 危険物第4類における位置づけ
危険物第4類は、危険性の高い順に分類されており、第2石油類は以下の順位に位置します。
- 特殊引火物
- 第1石油類(引火点 $21^\circ\text{C}$未満)
- アルコール類
- 第2石油類 👈 ここ
- 第3石油類
- 第4石油類
- 動植物油類
引火点の範囲からわかるように、ガソリンなどが含まれる第1石油類(引火点 $21^\circ\text{C}$未満)に比べると、引火の危険性は低いとされていますが、適切に取り扱わなければ火災の危険があることに変わりはありません。
代表例と水溶性・非水溶性
第2石油類には、私たちの生活に密接に関わる物質から、工業的に重要な物質まで幅広く含まれます。また、第1石油類などと同様に水溶性と非水溶性の物質が混在しているのが特徴です。
| 分類 | 物質名 |
| 非水溶性 | 灯油、軽油、クロロベンゼン、キシレン |
| 水溶性 | 酢酸(作酸)、アクリル酸 |
火災時の消火活動において、水に溶けるか溶けないかは非常に重要となるため、物質の性状として必ず把握しておく必要があります。
個別物質の性質と注目すべき危険性
次に、代表的な第2石油類である6つの物質について、その特有の性質と取り扱い上の注意点を見ていきましょう。
A. 灯油と軽油:身近な燃料の注意点
灯油と軽油は、原油を分留して得られる性質のよく似た燃料です。
共通する性質と危険性
- 物性: 引火点や発火点、比重、燃焼範囲が非常に似ています。
- 引火の危険: 引火点以上の液温になると、ガソリンと同程度の引火の危険性があります。
- 静電気: 電気の不良導体(不導体)であり、タンクへの注入時などの流動摩擦により静電気を発生しやすいため、静電気火災に厳重な注意が必要です。
- その他: 霧状にしたり布に染み込ませたりすると、空気との接触面積が増え、引火しやすくなります。また、ガソリンと混合すると引火性が高まります。
異なる点
| 項目 | 灯油 | 軽油 |
| 色 | 無色〜淡青色 | 黄色〜淡褐色 |
| 沸点 | 145∘C〜270∘C | 70∘C〜370∘C(軽油の方が高い) |
| 用途 | ストーブ燃料、ボイラー燃料など | ディーゼルエンジン燃料など |
B. クロロベンゼン:水より重い液体
ベンゼン(第1石油類)に塩素(Cl)が1つ付いた物質です。
- 性状: 無色の液体で、特有のにおいを持ちます。
- 溶解性: 非水溶性ですが、有機溶剤には溶けます。
- 特筆すべき特徴: 比重が1より重く、水に沈むのが大きな特徴です。塩素が付いている化合物は一般に比重が重くなる傾向があります。
- 用途: 除草剤、色素、ゴムなどの原料。
C. キシレン:芳香を持つ非水溶性の溶剤
ベンゼンにメチル基が2つ付いた化合物で、オルト、メタ、パラの3つの異性体が存在します。
- 性状: 無色透明の液体で、特有の**方向臭(芳香)**があります。
- 溶解性: 非水溶性で、ジエチルエーテルなどの有機溶剤にはよく溶けます。
- 用途: 溶剤として広く使用されます。
D. 酢酸(作酸):おなじみの酸
食酢に使われる成分です。第2石油類の中で水溶性に分類されます。
- 溶解性: 水溶性であり、水によく溶けます。
- 性状: 無色液体で刺激臭があります。水溶液は弱酸性を示します。
- 特殊な特徴: $17^\circ\text{C}$以下で凝固し、氷のようになるため、氷酢酸とも呼ばれます。
E. アクリル酸:重合の危険性に要注意!
酢酸と同様に水溶性の物質です。
- 溶解性: 水にも有機溶剤にも溶けます。比重は重いです。
- 最も重要な危険性: 非常に重合しやすい性質を持っています。重合が始まると熱を発生し、容器の破裂など重大な事故につながる可能性があります。
- 取り扱い注意点: 重合を防ぐために重合禁止剤を添加することが最も重要です。加熱、高温体、酸化性物質、過酸化物質など、重合のきっかけになるものとの接触は絶対に避けなければなりません。
💡 まとめ
第2石油類は、灯油や軽油をはじめとする非常に身近な物質を含む一方で、クロロベンゼンのように水に沈むもの、酢酸やアクリル酸のように水溶性のもの、そしてアクリル酸のように重合という特有の危険性を持つものなど、その性質は多岐にわたります。
これら第2石油類を取り扱う際は、必ず引火点や水溶性/非水溶性を確認し、それぞれの物質の特有の危険性(静電気、重合など)を理解した上で、適切な安全対策を講じることが重要です。安全な取り扱いを心がけましょう!

