こんにちは!今回は、製造業などで品質を管理するために使われるX-R管理図について、分かりやすく解説していきます。同じ製品を繰り返し作っても、全く同じ品質のものを製造するのは難しいですよね。どうしても少しずつばらつきが出てしまいます。このばらつきを管理して、製造工程が安定しているかどうかをチェックするためのツールが管理図なんです。
🔬 管理図の種類:解析用と管理用
管理図には、主に二つの目的と役割を持つ種類があります。
1. 解析用管理図(過去の安定性をチェック)
解析用管理図は、あらかじめ収集したデータに基づいて、工程が安定状態であるかどうかを調べるための管理図です。
- 目的: 過去のデータを分析し、工程が管理状態にある(統計的に安定している)かを確認します。安定していない場合は、異常なばらつきの原因(異常原因)を特定し、工程を改善します。
- 流れ: 過去のデータ → 管理限界線の算出 → 工程の安定性の確認と改善
2. 管理用管理図(リアルタイムの監視)
管理用管理図は、解析用管理図の管理限界線を延長して、データを収集するごとに異常がないかどうかを検討する管理図です。
- 目的: 工程が安定状態になった後、その状態を維持するために、現在進行中の生産ロットの品質が管理限界内に収まっているかをリアルタイムで監視します。
- 流れ: 安定した工程 → 管理限界線の延長 → 新しいデータのプロット → 異常の早期検出
📈 代表的な管理図:X-R管理図
数ある管理図の中でも、X-R管理図は特に一般的で、製品の寸法や重さといった計量値の管理によく用いられます。この管理図は、「ばらつき」と「平均」という二つの異なる変動を同時に監視します。
R管理図:ばらつきの監視(群内変動)
R管理図は、ばらつきの変化(群内変動)を表すものです。
- RはRange(範囲)の略で、各サブグループ(群)内のデータの最大値と最小値の差(範囲)をプロットします。
- 群内変動は、同じサブグループ内で発生する、主に偶然原因による小さな変動の大きさを示します。
- 役割: 製造機械の摩耗や、材料の微細な不均一性など、短期間で起こる変動の安定性をチェックします。
X管理図:平均の変化の監視(群間変動)
X管理図($\bar{X}$管理図)は、平均の変化(群間変動)を表すものです。
- $\bar{X}$はAverage(平均)の略で、各サブグループの平均値をプロットします。
- 群間変動は、サブグループ間(例えば、朝と午後、機械Aと機械Bなど)で発生する平均的な値の変動を示します。
- 役割: 設定値のズレ、工具の交換、作業者の変更など、比較的大きな異常原因による工程の中心値(平均)のシフトをチェックします。
計算で管理限界線を設定する
管理図を作るには、まず**管理限界線(UCL, LCL)**という基準線を計算で求めます。この線からデータがはみ出ると、「異常な状態」と判断します。
例:解析用管理図の計算
製品を5個ずつ1つのグループ(群)として、データを集めた場合を考えてみましょう。
- X管理図の管理限界線
- 中心線 (CL) = 1.240
- 上側管理限界線 (UCL) = 1.240 + (0.577 × 0.250) = 1.384
- 下側管理限界線 (LCL) = 1.240 – (0.577 × 0.250) = 1.096
- R管理図の管理限界線
- 中心線 (CL) = 0.250
- 上側管理限界線 (UCL) = 2.114 × 0.250 = 0.529
- 下側管理限界線 (LCL) = 0
これらの管理限界線は、統計的に安定していると見なせる範囲を示しています。
実際に工程を評価してみよう!
1. 解析用管理図で安定性を確認
先ほどの計算で作成した管理図に、集めたデータをプロットしてみます。もし、どの点も管理限界線の中におさまり、点の並びにも偏りがないなら、その工程は「統計的管理状態」にあると判断できます。つまり、現状は安定した状態で製造が行われている、ということです。
2. 管理用管理図で異常を発見!
工程が安定していると確認できたら、次は管理用管理図に切り替えます。これは、解析用で使った管理限界線をそのまま延長して使います。
その後の5日間のデータをチェックしたところ、R管理図において、群番号3のデータが0.6となり、管理限界線であるUCL=0.529を超過していることがわかりました。
これは、「ばらつきが増えた」という異常を示しています。この異常を見つけたら、すぐに製造ラインを止めて、何が原因か調査し、対策を立てる必要があります。
その他の異常のサイン
管理図では、管理限界線から外れるだけでなく、データの並び方にも注意が必要です。
- 連(れん):
- 中心線(CL)を挟んで、どちらか一方に連続して点が並ぶ状態のことです。
- これは、何らかの原因で製品の平均値がずれている可能性を示します。
- 中心傾向:
- 中心線(CL)の近く、特に上下1/3の範囲に連続して点が並ぶ状態のことです。
- これは、ばらつきが小さくなりすぎている場合などに起こることがあります。
管理図を正しく活用すれば、品質の異常を早期に発見し、より安定した製品づくりが可能になります。ぜひ、あなたの仕事にも取り入れてみてくださいね!

