生産システムの総合効率化を目指す「TPM(Total Productive Maintenance:全員参加の生産保全)」は、単なる設備メンテナンスではありません。オペレーター(作業者)が主役となり、設備を最高の状態に保つための「自主保全」を確立することが鍵となります。
この記事では、その自主保全活動を現場に定着させるための0から7のステップと、活動を支える**「保全の3要素」**を徹底解説します。
TPMの土台:理解すべき二つの「劣化」
設備劣化には二種類あります。TPMは、この両方に対処します。
- 自然劣化(経時劣化):
- 時間の経過や使用によって避けられず発生する劣化です。
- TPMでは、事前準備で劣化が自然($\text{34}$)現象であることを認識し、計画的な保全で寿命を全うさせます。
- 強制劣化(加速劣化):
- 不適切な運転や管理の不備で、本来の寿命より早く進行する劣化です。
- TPMでは、清掃・点検と改善活動により、原因を根本から排除することに重点を置きます。
保全の3要素:自主保全の活動の柱
TPM活動は、この3つの具体的な行動によって構成され、劣化のサイクル全体を管理します。
- 劣化の防止(未然防止):
- 設備が劣化しないように、運転条件の遵守や日々の管理を徹底します。
- 劣化の測定(状態監視):
- 設備の状態を常に把握するため、清掃を点検($\text{35}$)に変えるなど、チェック活動を行います。
- 劣化の復元(修復・改善):
- 劣化した箇所を元の状態に復元($\text{36}$)し、さらに再発防止の改善を加えます。
【実践編】TPM展開プロセス:自主保全の0〜7ステップ
TPMは、**設備を変えるステップ(1〜3)**から、**人を変えるステップ(4〜7)**へと移行することで、真の成果を生み出します。
準備・初期の変革(設備を変える)
| ステップ | 名称 | 主な活動とTPMの思想 |
| 0 | 準備段階 | 動機づけと組織体制構築。劣化は自然現象であることを理解し、全員参加の意識を高める。 |
| 1 | 初期掃除・点検 | 徹底的な清掃と同時に不具合を発見。清掃を点検に変え、設備の強制劣化をストップさせる。 |
| 2 | 発生源・困難箇所対策 | 汚れの原因や点検しにくい場所を特定し、設備を改善する(清掃の防止)。 |
| 3 | 自主保全の仮基準作成 | 清掃・給油・点検の仮の標準をオペレーター自らが作成し、劣化の防止・測定を仕組み化する。不具合は復元し改善。 |
中期・後期の変革(人が変わる・定着)
| ステップ | 名称 | 主な活動とTPMの思想 |
| 4 | 総点検 | 設備技術部門の指導の下、設備の構造や機能の教育を受け、専門的な知識で総点検を実施。人のスキルを飛躍的に向上させる。 |
| 5 | 自主点検 | 第3ステップの基準と第4ステップで得た知識に基づき、オペレーター自身が点検・保全を日常業務として実施・維持する。 |
| 6 | 標準化 | 自主保全だけでなく、生産・品質など関連業務の標準を確立し、活動の成果を定着させる。 |
| 7 | 自主管理の徹底 | 設定された目標を達成し、自主保全活動を継続的に改善・進化させる。自己管理能力を持った強い現場が実現する。 |
まとめ:TPMが生み出す究極の成果
TPM活動は、「設備が変わる」段階から、「人が変わる」段階を経て、最終的に「現場が変わる」という文化的な変革をもたらします。
自主保全のステップを忠実に実行し、日々の活動の中で「劣化の防止・測定・復元」のサイクルを回すことで、あなたの現場も**「事故ゼロ・不良ゼロ」**を達成し、持続的な成長を実現できるでしょう。

