私たちの身の回りにある製品は、様々な材料から作られています。その中でも特に重要な役割を果たす鉄鋼、銅、プラスチック、そしてゴムについて、その種類や特性、分類などをわかりやすく解説していきます。
🔩 鉄鋼とその分類
鉄鋼は、鉄(Fe)を主成分とし、これに炭素(C)を加えて強度や加工性を向上させた合金です。
鉄鋼の種類
鉄鋼は、その成分や製造方法によって大きく分類されます。
- 炭素鋼(Carbon Steel): 鉄と炭素を主成分とする鋼で、一般的に最も広く使用されています。
- 低炭素鋼(軟鋼): 炭素含有量が少なく、延性に富み、溶接性も良好です。
- 中炭素鋼: 炭素量が中間で、強度と靭性のバランスが取れています。機械構造用部品などに使用されます。
- 高炭素鋼(硬鋼): 炭素量が多く、硬度が高く耐摩耗性に優れますが、脆くなりやすいです。工具やバネなどに使われます。
- 合金鋼(Alloy Steel): 鉄と炭素の他に、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)などの合金元素を添加し、特定の性能(耐食性、耐熱性、高強度など)を高めた鋼です。
- ステンレス鋼(Stainless Steel: SUS): 特にクロムを10.5%以上含み、高い耐食性を持つ合金鋼です。
- 工具用合金鋼: 切削工具や金型などに使われる、非常に硬く、耐摩耗性や耐熱性に優れた合金鋼です。
鉄鋼の記号表示
日本の**JIS(日本産業規格)**では、鉄鋼材料を特定の記号で表示し、その種類や品質を示しています。
| 記号の例 | 意味 | 用途の例 |
| SS400 | 一般構造用圧延鋼材 | 建築物、橋梁などの構造材 |
| SM490 | 溶接構造用圧延鋼材 | 溶接が前提となる構造物 |
| S45C | 機械構造用炭素鋼鋼材 | 機械部品、シャフト |
| SUS304 | ステンレス鋼材 | 厨房機器、化学プラント |
トタンとブリキ:メッキ鋼板
どちらも薄い鋼板に金属のメッキを施して耐食性を高めたものです。
- トタン: 鋼板に**亜鉛(Zinc)**をメッキしたもの。耐食性に優れ、屋根材やバケツなどに使われます。
- ブリキ: 鋼板に**錫(Tin)**をメッキしたもの。無毒で加工性が良く、主に食品缶詰の容器などに使われます。
工具用合金鋼の種類
切削、打抜き、成形などの作業に使われる工具の材料で、非常に高い硬度と耐摩耗性が求められます。
- 高速度工具鋼(ハイス:SKH): 高い温度でも硬さが保たれる(耐熱性が高い)ため、高速切削工具に使われます。
- 合金工具鋼(SKS、SKD): 金型やゲージ、ドリルなどに使われます。
- 炭素工具鋼(SK): 比較的安価で、手工具などに使われます。
ステンレス鋼(SUS)の種類
クロムの含有量などにより、主に以下の種類があります。
- オーステナイト系(SUS304, SUS316): ニッケルも含み、最も一般的に使われます。非磁性で耐食性、加工性に優れます。
- フェライト系(SUS430): クロムを主成分とし、磁性があります。安価で耐食性は304よりやや劣ります。
- マルテンサイト系(SUS410, SUS420): 焼入れにより硬化させることができ、刃物などに使われます。
🟡 銅およびその合金
銅(Copper: Cu)は、その優れた電気伝導性と熱伝導性により、電線や熱交換器などに不可欠な材料です。また、耐食性や美しい光沢も特徴です。
銅の主な合金
- 真鍮(しんちゅう / Brass): 銅と**亜鉛(Zn)**の合金。加工性や鋳造性に優れ、五円玉、水道の蛇口、楽器などに使われます。
- 青銅(せいどう / Bronze): 銅と**錫(Sn)**の合金。硬く耐食性に優れ、ブロンズ像、記念貨幣、機械部品などに使われます。
♻️ プラスチック材料
プラスチックは、軽量で加工しやすく、電気を通しにくい(電気絶縁性)など、多くの利点から幅広く使われている有機材料です。
プラスチック材料の長所と短所
| 長所(メリット) | 短所(デメリット) |
| 軽い(低密度) | 熱に弱いものが多い(耐熱性が低い) |
| 腐食しない(耐食性が高い) | 燃えやすいものがある |
| 電気を通しにくい(絶縁性に優れる) | 強度や剛性が金属に劣る |
| 成形しやすい(大量生産向き) | 紫外線や薬品で劣化するものがある |
プラスチックの分類
プラスチックは、熱に対する挙動によって大きく2種類に分けられます。
熱可塑性樹脂(Thermosetting Plastic)
熱を加えると溶けて軟らかくなり、冷やすと固まる性質をもちます。このプロセスを繰り返すことができるため、リサイクルが比較的容易です。
| 種類 | 略号 | 用途の例 |
| ポリエチレン | PE | ポリ袋、灯油タンク、ラップ |
| ポリプロピレン | PP | バケツ、自動車部品、繊維 |
| ポリスチレン | PS | 発泡スチロール、CDケース |
| ポリ塩化ビニル | PVC | パイプ、床材、電線被覆 |
| ポリエチレンテレフタレート | PET | ペットボトル、繊維 |
| アクリル樹脂 | PMMA | 透明板、水槽、レンズ |
| ナイロン | PA | 繊維、機械部品(歯車など) |
熱硬化性樹脂(Thermoplastic Resin)
加熱や硬化剤により一度硬化すると、再加熱しても溶けたり軟らかくなったりしない樹脂です。そのため、強度が高く、耐熱性にも優れますが、リサイクルは困難です。
| 種類 | 略号 | 用途の例 |
| フェノール樹脂 | PF | 電気部品、断熱材、接着剤 |
| ユリア樹脂 | UF | 食器、化粧板、接着剤 |
| メラミン樹脂 | MF | 食器、化粧板、塗料 |
| エポキシ樹脂 | EP | 接着剤、塗料、電子基板 |
| 不飽和ポリエステル樹脂 | UP | FRP(繊維強化プラスチック)、浴槽 |
🛠 接着する組み合わせとその接着剤
異なる材料を接合するための接着剤は、接合する材料(被着体)の組み合わせや、用途(強度、耐熱性など)によって使い分けられます。
| 被着体(組み合わせ)の例 | 適した接着剤の例 | 特徴・用途 |
| 木材 | 木工用ボンド(酢酸ビニル樹脂系) | 乾燥が早く、一般家庭で多用される |
| 金属、硬質プラスチック | エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系 | 強力な接着強度、金属同士の接着に強い |
| ゴム、皮革 | クロロプレンゴム系(ゴム系接着剤) | 柔軟性があり、接着後も弾性を保つ |
| プラスチック(PP, PEなど) | ポリオレフィン専用、瞬間接着剤(プライマー併用) | 難接着材料には専用品が必要 |
| ガラス、陶磁器 | エポキシ樹脂系、シリコーン系 | 透明性、耐水性が求められる場合に |
🎈 ゴムの種類
**ゴム(Elastomer)**は、大きな弾力性(弾性変形)を持つ材料の総称で、天然ゴムと合成ゴムに分けられます。
| 種類 | 特徴 | 用途の例 |
| 天然ゴム(NR) | 弾性、引裂き強度に優れる。耐油性、耐候性は劣る。 | タイヤ、手袋、輪ゴム |
| SBR | 合成ゴムで最も大量に使われる。耐摩耗性に優れる。 | タイヤ、靴底 |
| CR(クロロプレンゴム) | 耐候性、耐油性、難燃性に優れる。 | ウェットスーツ、電線被覆、ベルト |
| NBR(ニトリルゴム) | 耐油性に非常に優れる。 | オイルシール、ガスケット |
| EPDM | 耐候性、耐オゾン性、耐熱性に優れる。 | 自動車部品、屋根防水シート |
| シリコーンゴム(VMQ) | 耐熱性、耐寒性に優れる。無毒。 | パッキン、医療機器、調理器具 |
これで、主要な材料についての基礎的なまとめは終わりです。材料選びは、製品の性能やコストを大きく左右する重要な要素です。ぜひ、今後の学習や仕事にお役立てください!

