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駆動と伝達の基礎知識:機械を動かす仕組みを徹底解説!

私たちが目にする機械の多くは、「駆動」源からのエネルギーを、目的の動きに変えて伝える「伝達」の仕組みで動いています。この駆動と伝達の技術は、モノづくりを支える上で欠かせません。

この記事では、駆動・伝達の基本的な流れから、それらを構成する主要な要素(電動機、軸受け、歯車、Vベルト、チェーン)について、それぞれの機能と重要なチェックポイントを解説します。

駆動・伝達の流れと各部の機能・チェックポイント

駆動・伝達システムは、主に以下の流れで動力を伝達します。

  1. 駆動源(モーターなど):電気エネルギーなどを機械的な回転力に変換し、動力を生み出します。
  2. 伝達要素(カップリング、ベルト、チェーン、歯車など):駆動源の動力を、必要な速度、トルク、方向などに変換して、負荷(動かしたい対象)に伝えます。
  3. 支持要素(軸、軸受けなど):回転する部品を安定して支え、円滑な運動を維持します。
  4. 終端(負荷):伝達された動力により、実際に作業を行います。

駆動・伝達 各部の機能とチェックポイント

部品機能主なチェックポイント
電動機(モーター)動力源として回転力を生み出す異音、異常な振動、発熱、定格電流値(過負荷でないか)
軸受け(ベアリング)回転軸を滑らかに支持し、摩擦を減らす異音、異常な振動、発熱、潤滑状態(グリス・油の状態)
伝達要素(歯車・ベルトなど)動力を伝達し、速度やトルクを変換する摩耗(歯の欠け・ベルトのひび割れ)、張り具合(ベルト・チェーン)、芯ずれ(ミスアライメント)
カップリング駆動軸と従動軸を連結し、軸のミスアライメントを許容する異音、振動、ガタつき、ボルトの緩み

動力を生み出す心臓部:電動機の種類

電動機(モーター)は、駆動システムの心臓部です。使用する電源や特性によって様々な種類があり、用途に応じて使い分けられます。

主な種類としては、以下のものがあります。

  • 交流(AC)モーター
    • AC誘導モーター(誘導機):最も一般的で、構造が簡単、堅牢で安価。産業機械などに広く使われます。
    • AC同期モーター(同期機):永久磁石(PM)を使うものが多く、高効率かつ高トルク密度が特徴。EVや高性能が求められる分野で採用されます。
  • 直流(DC)モーター
    • ブラシ付きDCモーター:構造が単純で制御しやすいが、ブラシの摩耗によるメンテナンスが必要です。
    • ブラシレスDCモーター(BLDC):ブラシがなくメンテナンスフリーで長寿命。高効率で精密な制御が可能です。
  • 特殊なモーター
    • ステッピングモーター:パルス信号に同期して正確に回転する。位置決め用途に最適です。

回転を支える:軸受けの分類

**軸受け(ベアリング)**は、回転する軸を正しい位置で支え、摩擦を減らす重要な部品です。

方向による軸受けの分類(受ける荷重による分類)

軸受けが受ける力の方向により、以下の2種類に分類されます。

  1. ラジアル軸受け(ラジアル荷重)
    • 軸に対して直角方向(半径方向)にかかる荷重(ラジアル荷重)を支えます。
    • 例:深溝玉軸受、円筒ころ軸受など。
  2. スラスト軸受け(アキシアル荷重)
    • 軸に対して平行方向(軸方向)にかかる荷重(アキシアル荷重)を支えます。
    • 例:スラスト玉軸受、スラストころ軸受など。

一つの軸受けが両方の荷重を支える能力を持つ場合もあります。

構造による軸受けの分類

構造の違いにより、軸受けは大きく以下の2種類に分類されます。

  1. 転がり軸受け(ベアリング)
    • 軸と軸受けの間に**玉(ボール)やころ(ローラー)**などの「転動体」を介して回転を支持します。
    • 摩擦抵抗が小さく、起動トルクが小さいのが特徴です。
    • 転動体の種類によって「玉軸受け」「ころ軸受け」に分類されます。
  2. すべり軸受け(プレーンベアリング)
    • 軸と軸受けが直接接触し、間に**潤滑油(または固体潤滑剤)**の膜を介して軸を支持します。
    • 構造が単純で、大きな荷重や衝撃荷重に強いのが特徴です。

動力を変換する:歯車の種類と歯形

**歯車(ギア)**は、動力の伝達、回転速度やトルクの変換、回転方向の変更などに使われる最も基本的な伝達要素です。

歯車の種類(軸の関係による分類)

分類軸の関係代表的な種類特徴と用途
平行軸平行な軸の間で伝達平歯車(スパーギア)最も一般的。製作が容易で、動力伝達に広く使用。
はすば歯車(ヘリカルギア)歯筋がねじれており、平歯車より強く静か。自動車の変速機など。
交差軸交わる軸(通常90度)の間で伝達すぐばかさ歯車(ベベルギア)傘のような円錐形。軸の方向を変える。
食い違い軸平行でも交差もしない軸の間で伝達ウォームギアネジ状のウォームと歯車を組み合わせる。大きな減速比を得られ、セルフロック性(逆転防止)がある。
ねじ歯車はすば歯車同士を食い違い軸で噛み合わせる。

歯車の歯形

歯車が噛み合う部分の形状を歯形と呼び、主に以下の2種類があります。

  1. インボリュート歯形
    • 現在、動力伝達用として最も広く使われている歯形です。
    • 特徴:歯車の中心距離が多少ずれても、適切に噛み合う。加工が容易で量産性が高い。
  2. サイクロイド歯形
    • 主に時計などの精密機械や低負荷の製品に使われます。
    • 特徴:摩擦が少なく、回転抵抗が低い。

フレキシブルな伝達:Vベルトとチェーンの種類

ベルトやチェーンは、比較的離れた二軸間で動力を伝達するのに適した伝達要素です。

Vベルト

Vベルトは、断面がV字形の摩擦伝動ベルトで、工場の機械駆動などに広く使われます。

  • 構造:主にゴム製のV字断面を持ち、内部に強力な引張体(コード)が埋め込まれています。プーリー(V溝のついた滑車)の側面に密着し、摩擦力で動力を伝えます。
  • 特徴:構造が簡単、安価で保守が容易。過負荷時にスリップするため、モーターの保護(ヒューズの役割)にもなります。
  • 種類:JIS規格では、断面寸法によりM型、A型、B型、C型、D型、E型の6種類が規定されています。

チェーンの種類

チェーン伝動は、歯車と同じように歯の噛み合い(係合)で動力を伝達します。スリップがなく、大きな力を伝達できるのが特徴です。

  • ローラーチェーン(ローラチェーン)
    • 最も一般的な産業用チェーンで、自転車のチェーンと似ています。
    • ピン、ブッシュ、ローラー、内プレート、外プレートで構成されます。
    • 特徴:高効率で信頼性が高く、幅広い用途に使用されます。
  • サイレントチェーン(無声歯形チェーン)
    • 歯車のように噛み合う特殊な形状をしており、騒音や振動が少ないのが特徴です。
    • 自動車のエンジン内(タイミングチェーン)など、高速回転や精密な同期が求められる場所に使われます。

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