こんにちは!職場の安全管理は、企業の社会的責任(CSR)の基本であり、持続的な事業運営の土台です。過去の労働災害統計データは、単なる記録ではなく、自社の潜在的なリスクを評価し、効果的な対策の優先順位を決める上で極めて重要な情報源となります。
今回は、安全レベルを客観的に評価するための主要な指標と、その活用法を解説します。
労働災害統計が示す「真のリスク」
企業が安全対策を講じる際、まず必要となるのが**「自社でどれだけの災害が発生しているか」、そして「その災害がどれほど深刻か」**を把握することです。
📊 評価すべき対象
統計の対象となるのは、死亡災害や、休業4日以上の死傷災害(労働者が業務上または通勤中に負傷・疾病にかかり、休業した災害)など、重篤な結果を伴う災害です。これらのデータを集計することで、死傷者数の傾向や、災害の発生状況を把握します。
📅 年千年率(ネンセンネンリツ)の視点
特に重篤な事故の発生リスクを評価する際、年千年率(年間1,000人あたりで発生する災害件数を示す指標)という視点も用いられます。これは、事業の規模に関わらず、労働者1,000人が1年間働いた場合に、何件の災害が発生するかという確率的なリスクの大きさを示すもので、同業他社との比較やリスク評価に役立ちます。
安全レベルを測る主要な2つの指標
労働災害の深刻度と頻度は、「延べ労働時間」という共通の尺度を用いて、以下の2つの指標で客観的に評価されます。
1. 度数率(災害発生の頻度を示す)
度数率は、延べ労働時間100万時間あたりの休業4日以上の死傷者数を示す指標です。度数率=延べ労働時間休業4日以上の死傷者数×1,000,000
この数値が高いほど、災害の発生頻度が高い、すなわち安全管理が不十分であることを示します。自社の死傷者数の推移を基に、年々この数値が改善しているかを追うことが重要です。
2. 強度率(災害の深刻度を示す)
強度率は、延べ労働時間1,000時間あたりの労働損失日数を示す指標です。強度率=延べ労働時間労働損失日数×1,000
ここでいう労働損失日数とは、災害によって失われた労働能力を数値化したものです。例えば、死亡災害や永久全労働不能の場合、一律7,500日の労働損失日数が計上されます。この数値が高いほど、発生した災害が重篤である、すなわち災害の深刻度が高いことを意味します。
指標を活用したリスク評価と優先順位
これらの指標を分析することで、**「頻度」と「深刻度」**の2軸で自社の安全レベルを客観的に評価できます。
- 度数率が高い場合は、基本的な安全対策や教育に優先順位を置く必要があります。
- 強度率が高い場合は、重大事故につながりやすい危険源の排除や、死亡災害に至らないための安全装置の強化に優先順位を置く必要があります。
労働災害統計を適切に活用し、度数率と強度率を改善し続けることが、安全レベルの向上と、年千年率のような長期的なリスク低減に繋がるのです。

