こんにちは!生産管理において、ライン生産方式の効率を極限まで高めるための鍵となるのがラインバランシングです。これは、単にスケジュールを組むだけでなく、稼働率とコスト効率を直接的に改善する科学的な手法です。
今回は、ラインバランシングの目的と、その効果を測るための重要な指標、そして複数工程がある場合のサイクルタイムの計算方法を解説します。
ラインバランシングの目的と重要指標
ラインバランシングとは、生産ライン上の各作業ステーションに割り付ける作業量を均等化する方法です。これにより、ムダを徹底的に排除します。
🚨 ボトルネックとムダをなくす
目的は、特定の工程に作業が集中するボトルネック(制約工程)や、作業量の少ない工程で発生する手待ちのムダをなくし、ライン全体の編成効率を高めることです。
📊 効率を測る3つの指標
ラインバランシングの効果は、以下の指標で定量的に測定されます。
- 編成効率(Line Efficiency) ラインが持つ能力に対し、実際にどれだけ効率良く使えているかを示す指標です。編成効率が高いほど、ムダが少ない、理想的なラインであることを意味します。 編成効率(%)=最も作業時間が長い工程の時間×工程数全工程の合計作業時間×100
- バランスロス(Balance Loss) 編成効率が100%(理論上の理想状態)からどれだけ離れているかを示す指標で、ムダの大きさを表します。この値が小さいほど良い状態です。 バランスロス(%)=100%−編成効率(%)
- 組余裕率 これは、編成効率を高めた結果、ライン全体の能力に対して生まれる「時間的な余裕」を示す指標です。計画的な休憩やバッファ時間など、ラインの柔軟性に関わります。
ラインの能力を示す鍵:「サイクルタイム」の算出
ラインバランシングで最も重要な時間の概念がサイクルタイムです。
- サイクルタイム:ラインが製品を1つ完成させるのに実際にかかる時間です。この時間は、必ず**「最も作業時間が長い工程の時間」**によって決定されます(ボトルネック工程の時間)。
このサイクルタイムを市場の要求に応じたタクトタイム(基準生産時間)以下に抑えることが、ラインバランシングの目標となります。
🚦 複数分岐がある場合のサイクルタイム計算方法
通常の直列なラインでは、最も長い工程の時間がそのままサイクルタイムとなります。しかし、検査や仕上げなどで複数分岐(並列作業)がある場合、サイクルタイムの計算には注意が必要です。
複数の分岐がある場合、そのサイクルタイムは、「分岐の作業ステーションの中で、最も作業時間の長い工程の時間」となります。
例: ある工程(ステーションA)の後、並列で検査(30秒)と梱包(40秒)の2つの分岐がある場合。
- 検査の時間:30秒
- 梱包の時間:40秒
この並列工程のサイクルタイムは、並列作業の中で最も時間がかかる工程、すなわち梱包の40秒が全体のサイクルタイムとなります。
なぜなら、検査が30秒で終わっても、梱包が40秒かかるため、次の工程へ製品が流れるのを待つ時間が発生し、ライン全体の流れは40秒に律速されるからです。このボトルネックを解消することが、ラインバランシングの最終目的です。
ラインバランシングの手順(山積み・山崩し)
ラインバランシングは、以下の手順で行われます。
- 要素作業への分割と時間測定: 作業を細かく分け、標準時間を測定。
- 先行順位の設定: どの作業の前にどの作業を終える必要があるか(作業順序の制約)を明確化。
- ピッチダイアグラムの作成: 各工程の作業時間をグラフ化(山積み)し、偏りを視覚化。
- 改善(山崩し): 作業の組み替え、設備の導入、作業方法の改善などにより、サイクルタイムをタクトタイム以下に抑え、編成効率を向上させます。
ラインバランシングを極めることは、バランスロスを最小限に抑え、編成効率を最大化する、生産管理の最も基本的な、そして奥深い目標なのです

