生産統制の活動は、まず「何を、どう作るか」という明確な土台作りから始まります。
製品設計と手順計画
すべての始まりは製品設計です。製品の機能と構造を定めた設計図と、詳細な技術要件を記した仕様書は、生産活動の最も重要なインプットとなります。
次に、この設計を実現するための製造手順を定める手順計画が必要です。
- 作業標準書: 各工程でどのような手順、方法、工具を用いて作業を行うかを定めた文書です。品質と効率を一定に保つための基盤となります。
- 工数計画: 各作業に必要な時間(工数)を具体的に見積もり、人や設備の負荷が適切であるかを検証します。
能力とリードタイムの管理
この計画段階で、生産システムが持つ能力(一定期間内に生産できる最大量)を正確に把握し、製品が原材料から最終製品になるまでにかかるリードタイムを算出します。
- 計画通りに生産を進めるためには、設備の能力だけでなく、在庫(原材料、仕掛品、製品)の状況をリアルタイムで把握することが極めて重要です。
- また、予期せぬトラブルや需要変動に備え、計画と実績のズレを吸収するためのバッファリング機能(時間的な余裕や安全在庫)をどこに、どれだけ持たせるかも計画の重要な要素です。
📝 生産実行の要:正確な「作業手配」
計画が定まったら、それを現場で実行するための作業手配を行います。これは、現場の作業員に対して「何を、いつ、どこで、どれだけ作るか」を具体的に指示するプロセスです。
1. 作業指示ドキュメント
現場での混乱を避け、効率的に作業を進めるためのドキュメントが発行されます。
- 作業指示書: 特定の製品や部品の製造に関する詳細な指示(使用材料、数量、納期、担当者など)が記載されます。
- 作業指示伝票: 作業指示書に基づき、現場で進捗管理や実績収集のために使われる小さな帳票やデジタルデータです。これは、作業者が作業を完了した証拠となり、後にコスト計算や進捗確認に利用されます。
2. 現場配置情報
作業手配には、モノの流れを物理的に定義する情報も必要です。
- 設備配置図: どの設備配置図上のどの機械や作業場に、どの作業を割り当てるかを明確にします。これにより、モノや人の移動ロスを最小限に抑えます。
📊 生産現場を「見える化」する!進捗管理の強力ツールとシステム
こんにちは!生産活動を計画通りに実行し、納期を確実に守るためには、現在の進捗状況を正確に把握し、問題があればすぐに対処する生産統制の仕組みが不可欠です。
今回は、生産統制で特に重要な役割を果たす「見える化」ツールと、その運用を支えるシステムについて解説します。
計画と実績を視覚化する進捗ツール
生産統制において、スケジュールと実績のズレを一目で把握するための代表的なツールが、ガントチャートです。
🗓️ ガントチャート
ガントチャートは、縦軸に作業項目(製品や工程)、横軸に時間をとって、計画された作業の開始日と終了日を棒グラフで表した表です。
- 役割: 全体のスケジュールと個々の作業の進捗状況を視覚的に把握する最も一般的なツールです。
- 活用: 計画の遅延を早期に発見し、リソースの再配分やスケジュールの見直しなど、迅速な対策を講じるための基礎情報を提供します。
滞留と効率を測る分析ツール
現場のモノの流れ(流動)と、リードタイム(所要時間)を分析し、ムダやボトルネックを特定するための強力なツールが、製造三角図と流動数曲線です。
📐 製造三角図(タイムチャート)
製造三角図は、縦軸に累積生産量、横軸に時間をとり、計画と実績のグラフを描くことで、生産の進捗状況と遅延を視覚的に評価する図です。
- 特徴: グラフの傾きが生産速度を示します。計画線と実績線の面積の差は、遅延している生産量を表し、進捗の遅れを数量ベースで明確に把握できます。
🌊 流動数曲線
流動数曲線は、製造三角図と密接に関連し、特に「滞留」と「リードタイム」を評価するのに優れています。
- 特徴: 累積の投入量と産出量のグラフを描き、その二つの曲線の垂直距離が、その時点での仕掛品(製造途中の在庫)の量を示します。また、水平距離が、その製品のリードタイム(滞留期間)を示します。
- 役割: ライン上の仕掛品(在庫)とリードタイムの長さを視覚化することで、ボトルネックやムダな在庫の発生箇所を特定し、改善の焦点を絞ることができます。
実践的な進捗管理システム
進捗管理を現場で機能させるための具体的な仕組みも重要です。
🔄 カムアップシステム(Kam-Up System)
カムアップシステムは、製造現場で作業の遅れが生じ、納期に間に合わない懸念があるときに、「この作業を優先して先に処理せよ」と、**遅延している作業を意図的に持ち上げて(カムアップさせて)**優先的に処理させる仕組みです。
- 役割: スケジュール全体が崩壊するのを防ぐための、調整機能や緊急対応システムとしての役割を果たします。
- 留意点: このシステムが頻繁に発動すると、かえって現場の混乱を招くため、あくまでガントチャートや流動数曲線で発見したボトルネックを解消するための最終手段として活用すべきです。
これらのツールやシステムを組み合わせることで、生産統制は単なる実績の記録ではなく、未来の生産を改善するための戦略的な活動となるのです。
✅ まとめ:生産統制は情報を繋ぐハブ
生産統制は、製品設計から生まれた設計図や仕様書を元に、手順計画で作業標準書や工数計画を作成します。そして、在庫や能力、リードタイムを考慮した上で、作業手配として作業指示書や作業指示伝票を現場に発行します。
すべての情報が連携し、計画された生産量とコストが達成されるように、全体の流れを制御する。これこそが、生産統制が担う事業成功の鍵となる真の役割なのです。

