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📈 製造工程の「実力」を測る!工程能力指数(Cp)の評価基準

**工程能力指数(Cp)は、製造工程がどれだけ安定して高品質な製品を作れるかを示す、重要な指標です。製品のばらつき(精度)**が、規格の許容範囲に対してどれだけ余裕をもって収まっているかを数値化します。

$\mathbf{Cp}$の定義は、製品の規格幅を工程のばらつき ($\mathbf{6\sigma}$) で割ったものです。Cp=6σ規格幅​

このCpの評価基準には、特定の品質目標を達成するための明確なラインが引かれています。特に、5/3、4/3​、3/3​ という分数が、目標水準としてよく使われます。


Cpの評価基準一覧

Cpの値が大きければ大きいほど、工程能力は優れており、不良品(規格外れの製品)が出るリスクが低いことを示します。

Cp の値(分数)Cp の値(小数)評価改善の必要性
Cp≧5/3Cp≧1.67極めて十分(Six Sigma級)コスト低減の余裕あり
5/3>Cp≧4/3​1.67>Cp≧1.33十分(一般的な目標)現状維持で問題なし
4/3​>Cp≧3/3​1.33>Cp≧1.00まずまず十分とはいえないが許容範囲
3/3​>Cp≧2/3​1.00>Cp≧0.67不足ばらつきの改善が強く必要
Cp<2/3​Cp<0.67非常に不足工程を早急に見直す必要がある

🔑 基準となる分数の意味

Cpの各値は、工程のばらつき (6σ) が規格幅に対してどれだけ余裕をもって収まっているかを示します。

1. Cp=3/3​=1.00 の壁

Cp=1.00 のとき、規格幅と工程のばらつき (6σ) がちょうど同じになります。これは、製品の約 0.27% が理論上規格外れになることを意味します。この値を下回ると不良品が急増するため、製造工程において 1.00 は最低限クリアすべきラインとされます。

2. Cp=4/3​≈1.33 の目標

多くの品質管理で**「十分」**とされる目標値です。Cpが 4/3 の場合、規格幅が 8σ に相当し、不良率を極めて低く抑えることができます。

3. Cp=5/3​≈1.67 の理想

「シックスシグマ」と呼ばれる最高水準の品質を目指す際の目標値です。Cpが 5/3​ の場合、規格幅が 10σ に相当し、製品のばらつきが規格幅に対して非常に小さく、工程能力が極めて十分であることを示します。


⚖️ Cpだけでは不十分!Cpkも必ずチェック

Cpが 34​ や 35​ であっても、製品の**平均値が規格の中心からずれている(かたよりがある)**と、片側の規格外れが増えるリスクがあります。

この**「かたより」を考慮して、工程の真の実力を評価するのがCpk(かたよりを考慮した工程能力指数)**です。

  • 品質を確保するためには、高い Cp(精度)と、高い Cpk(正確さ)が両立されなければなりません。
  • Cpは高いのにCpkが低い場合、ばらつきは小さいものの平均値のズレが問題であると特定できます。

📝 QC検定3級対策:計算演習問題

以下の設定に基づき、工程能力指数を計算し、工程の状態を評価しましょう。

【問題設定】 ある部品の直径に関する安定した製造工程のデータは以下の通りです。

  • 特性値の平均 (μ): 10.05 mm
  • 特性値の標準偏差 (σ): 0.05 mm
  • 製品の規格: 10.00±0.15 mm

問1. この工程の規格幅を求めなさい。 問2. この工程の工程能力指数 Cp​ を計算しなさい。 問3. この Cp​ の値は、上記の評価基準でどのように評価されますか。(分数表記で答えなさい) 問4. この工程の、かたよりを考慮した工程能力指数 Cpk​ を計算しなさい。 問5. Cp​ と Cpk​ の評価から、この工程を改善するための最も適切な対策を述べなさい。

【解答と解説】

問1. この工程の規格幅を求めなさい。

解答

  • 規格上限値 (USL): 10.00+0.15=10.15 mm
  • 規格下限値 (LSL): 10.00−0.15=9.85 mm
  • 規格幅: USL−LSL=10.15−9.85=0.30 mm

問2. この工程の工程能力指数 Cp​ を計算しなさい。

解答

  • 6σ の値: 6×0.05=0.30 mm
  • Cp​=規格幅​/6σ=0.30/0.30​=1.00

問3. この Cp​ の値は、上記の評価基準でどのように評価されますか。(分数表記で答えなさい)

解答

  • Cp​=1.00=3/3​
  • 評価: まずまず(4/3>Cp≧3/3​ の範囲)

解説: Cp=1.00 は、工程のばらつき (6σ) がちょうど規格幅に収まっている状態を示します。これは最低限クリアすべきラインです。

問4. この工程の、かたよりを考慮した工程能力指数 Cpk​ を計算しなさい。

解答

  • 規格中心 (M): 10.00 mm
  • 平均値 (μ): 10.05 mm
  • Cpku​(上限側): 3σUSL−μ​=3×0.0510.15−10.05​=0.150.10​≈0.67
  • Cpkl​(下限側): 3σμ−LSL​=3×0.0510.05−9.85​=0.150.20​≈1.33
  • Cpk​: min(0.67,1.33)=0.67

問5. Cp​ と Cpk​ の評価から、この工程を改善するための最も適切な対策を述べなさい。

解答

  • **Cp​=1.00(まずまず)に対し、Cpk​≈0.67(非常に不足、または Cpk​<1.00)**と極めて低くなっています。
  • Cp​ は最低限の 1.00 ですが、Cpk​ がそれを大きく下回っている原因は、**平均値 (10.05 mm) が規格中心 (10.00 mm) から大きくずれている(かたよりがある)**ためです。
  • 最も適切な対策: 平均値を規格中心 (10.00 mm) に近づけるように調整し、かたよりを改善すること

解説: Cpk​≈0.67 という値は、平均値が上限規格 10.15 mm からわずか 2σ しか離れていないことを意味し、不良品が多発する危険な状態です。早急に平均値の調整が必要です。

品質管理の手法 > 工程能力指数

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