こんにちは!現代の製造業、そしてあらゆる業務プロセスにおいて、効率化とムダの排除は永遠のテーマです。この課題に取り組む科学的な手法こそが、**IE(インダストリアル・エンジニアリング)**です。
IEは、単なる現場改善にとどまらず、「人、モノ、設備」といった生産資源を最も効率よく組み合わせるための合理化の原則体系です。今回は、このIEの核心と、具体的な改善アプローチについて解説します。
IEの土台:「人・モノ・設備」と合理化の原則
IEは、生産資源であるヒト、モノ、設備に着目し、時間、動作、レイアウトの3大要素を通じて改善を推進します。その背景には、企業全体の効率を高めるための広範な視点があります。
🏢 企業財務と生産資源の最適化
IEは現場の話だけではありません。企業財務の観点から見ても、設備投資や人材への支出は、株式や債券といった資本市場に影響を与える重要な経営判断です。
- IEの役割: 少ない設備台数と人員で最大の効果を出すための体制や組織を設計し、無駄のない採用計画を立てることで、経営資源の最適化に貢献します。
💡 合理化の三大原則
効率化を追求するIEには、重要な3つの合理化の原則があります。
- 専門化: 特定の作業に特化することで、習熟度を高め、品質と効率を向上させます。
- 単純化: 作業や製品の構造を単純化し、複雑性から生じるムダを排除します。
- 標準化: 作業手順や部品、製品の仕様を標準化し、ムラをなくし、効率的な生産管理システムの運用を可能にします。
改善の規範:ECRSによるムダの排除
現場の作業活動のムダを排除するための具体的な思考フレームワークが**ECRS(イクルス)**です。これは、効果の高い改善から順に検討するための「規範」です。
| 頭文字 | 構成要素 | 改善行動の定義 |
| Eliminate | 取り除く | その作業自体が本当に必要か?不要であれば排除する(最も効果大)。 |
| Combine | 組み合わせる | 複数の作業を統合したり、連合作業や協同作業にしたりしてムダを削減。 |
| Rearrange | 並び替える | 作業順序やレイアウトを並び替えることで、移動や手待ちのムダを削減。 |
| Simplify | 簡素化 | 最後に残った作業を、動作経済の原則に基づき、より楽に単純化する。 |
ECRSの優先順位は、「E」が最優先です。ムダな作業をなくすことができれば、その後の労力やコストは一切不要になるからです。
分析手法:動作と時間の科学
工程分析は、作業活動を構成要素に分解し、ムダを見つけるための基本です。ここでは、表面的な動作に惑わされず、作業そのものを効率化することに焦点を当てます。
📌 動作研究と時間測定
- 動作研究: 動作経済の原則に基づき、作業者の動作を分析します。ビデオ分析などを利用して、「両手の動作を同時に行う」「移動距離を短くする」といった原則に照らしてムダな動作を排除します。
- 稼動分析と瞬間観測法: 設備台数や人員が、実際に作業している時間(稼動時間)と、手待ち・運搬時間(非稼動時間)の割合を調査するのが稼動分析です。特に、ランダムな瞬間に観察を行う瞬間観測法は、多大な労力をかけずに、稼動率やムダの発生状況を把握するのに有効です。
🕓 標準時間と余裕率
IEの最終的なアウトプットの一つが、標準時間の設定です。
- 標準時間: 熟練した作業者が、標準的な作業順序と方法で、適切なペースで作業を行った場合に要する時間です。
- 余裕率: 標準時間には、作業者の疲労回復や生理的なニーズ、突発的な事態(機械の調整など)に対応するための余裕率が加えられます。これにより、現実的で持続可能な生産計画が可能になります。
❔ 改善のための問いかけ:5W1H
どのような工程分析や動作研究を行う際にも、常に5W1H(Why, What, Where, When, Who, How)の視点から、**「なぜその作業が必要か?」「どのようにすればより良くできるか?」**を問い続けることが、改善への第一歩となります。
IEは、単なる現場の効率化に留まらず、企業の組織、人材、設備、そして企業財務の健全性に直結する、経営戦略の要なのです。

