×品質管理事業金融

計量値データに基づく検定と推定

QC検定2級合格ガイド|計量値の検定・推定 完全まとめ
QC検定 2級 対応

計量値の検定・推定
初心者でも合格できる完全ガイド

u 検定・t 検定・χ²検定・F 検定の使い分けから計算手順まで、「なぜその記号?」「なぜその公式?」を丁寧に解説します。

1検定と推定の基本的な考え方

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. 工場の品質管理では母集団を全数調査できない。だからサンプルで推測する。
  2. 検定=「差がある・変わった」を統計的に判断する手続き。
  3. 推定=母集団の真の値(μ, σ²)をサンプルから推測すること。
📖 前提知識:母集団・サンプル・母数

母集団とは調べたい対象全体。例:「今日工場で作ったボルト10万本すべて」。全数測定は不可能なので、一部(サンプル)を取り出して調べます。

母集団の特性を表す値を母数(パラメータ)と呼びます。直接測れない「真の値」です。サンプルから推測するしかありません。

🔤 ここで登場する記号
μミュー
母平均。母集団全体の平均値(真の値)。
mean(平均)の頭文字 m に対応するギリシャ文字。母集団の値にはラテン文字と区別するためギリシャ文字を使う慣習がある。

σシグマ
母標準偏差。母集団のばらつきの大きさ(真の値)。
standard deviation(標準偏差)の頭文字 s に対応するギリシャ文字。

σ²シグマ二乗
母分散。σ を2乗した値。ばらつきの指標として計算式でよく登場する。

検定とは

  • 目的 差・変化を統計的に判断
  • 手順 仮説 → 統計量 → 判定
  • 結論 有意差あり or なし

推定とは

  • 目的 μ・σ² の真の値を推測
  • 種類 点推定・区間推定
  • 結論 ○○〜○○の間(信頼率95%)
⚠️ 試験の落とし穴:検定と推定は独立している 「有意差がなかったときは推定を行っても無意味」は誤り。有意でないときや検定を目的としないときでも、推定だけを行うことがあります。

2仮説の立て方:H₀ と H₁

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. 検定は必ず「差がない(H₀)」という仮説から始める。
  2. H₀ が棄却されたとき初めて「差がある(H₁)」と積極的に言える。
  3. H₀ が棄却できなくても「等しい」とは言えない。「差があるとはいえない」が正しい。
📖 比喩:仮説検定は「裁判」と同じ構造

裁判では「被告は無実(推定無罪)」から始め、証拠が揃って初めて「有罪」と判定します。検定も同じです。まず「差がない(H₀)」を前提とし、データが十分な証拠を示したとき「差がある(H₁)」と判定します。証拠不十分なら「無罪(差があるとはいえない)」——「無実(差がない)」ではありません。

🔤 ここで登場する記号
H₀エイチ・ゼロ
帰無仮説。「差がない・変わっていない」という仮説。
H は Hypothesis(仮説)の頭文字。₀ は「無(null)」を意味し、”Null Hypothesis” とも呼ばれる。棄却されたとき「無に帰す(= 存在しなかったことになる)」仮説。

H₁エイチ・ワン
対立仮説。「差がある」など検定の目的を直接表す仮説。
H₀ に対立(Alternative)するので “Alternative Hypothesis”。₁ は「H₀ の次の仮説」を示す番号。Hₐ と書く流儀もある。

μ₀ミュー・ゼロ
基準となる母平均。「従来品の平均強度は40N」のように問題文で与えられる既知の値。
μ(母平均)に ₀ を添えて「H₀ の下での基準値」を示す。「ゼロ仮説の μ」と覚えると混乱しない。

検定では必ず次の2つの仮説を立てます。

仮説名記号意味採択されたときの結論
帰無仮説H₀「差がない・変わっていない」「差があるとはいえない」(消極的)
対立仮説H₁検定の目的そのもの「差があるといえる」(積極的)✅
対立仮説の3パターンと使い分け
パターン対立仮説使う場面有意になりやすさ
両側検定H₁: μ ≠ μ₀増えたか減ったか方向を問わず「変わったかどうか」を知りたいとき最も厳しい(棄却域が両端に分散)
右片側検定H₁: μ > μ₀「大きくなった」と予想して確認したいとき両側より有意になりやすい
左片側検定H₁: μ < μ₀「小さくなった(改善した)」と予想して確認したいとき両側より有意になりやすい
⚠️ 試験の落とし穴:H₀ が棄却できない ≠ 「等しい」 H₀ が棄却できなかったとき「μ = μ₀ と等しい」とは断言できません。正しくは「差があるとはいえない(証拠不十分)」。データや n が少なすぎて検出できなかっただけかもしれないからです。

32種類の誤り:α(第1種)と β(第2種)

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. 判定は確率的な推論なので、必ずどちらかの誤りを犯す可能性がある。
  2. α(有意水準)は検定前に自分で決める。β は決めない。
  3. α を小さくすると β は大きくなる(トレードオフの関係)。
📖 前提知識:棄却域とは何か

正規分布の山を思い浮かべてください。山の真ん中付近は「H₀ が正しいとき普通に起こる値の範囲(採択域)」。両端のほんの一部は「H₀ が正しくても滅多に起きない値の範囲(棄却域)」です。計算した統計量が棄却域に入れば「これは偶然じゃない=差がある」と判断して H₀ を棄却します。

🔤 ここで登場する記号
αアルファ
有意水準(危険率)。「H₀ が正しいのに棄却してしまう確率の上限」として検定前に設定する値。
ギリシャ文字アルファベットの第1番目の文字。「第1種の誤り」を表すために最初の文字 α が割り当てられた。通常 0.05(5%)または 0.01(1%)を使う。

βベータ
第2種の誤りを犯す確率。「差があるのに見逃してしまう確率」。
ギリシャ文字の第2番目の文字。「第2種の誤り」を表すため α の次の文字 β が使われる。検定では事前に指定しない(n や μ との距離によって変わるため)。
誤りの種類別名確率内容事前に決めるか
第1種の誤り「あわて者の誤り」α(有意水準)H₀ が正しいのに棄却してしまう(差がないのに「差がある」と判定)✅ 決める(通常0.05)
第2種の誤り「ぼんやり者の誤り」βH₁ が正しいのに採択しない(差があるのに「差がない」と判定)❌ 決めない
💡 α と β のトレードオフ
  • α を小さくする(基準を厳しくする)→ 棄却域が狭まる → β が大きくなる(見逃しが増える)
  • α を大きくする → 棄却域が広がる → β が小さくなる(見逃しが減る)
  • β を減らすには n(サンプル数)を増やすのが最善の方法
✅ 検出力 = 1 − β(「見逃さない確率」) 変化を正しく検出できる確率。n を増やすと検出力が上がります。α = 0.01 で有意になったとき「高度に有意」と表現します(α = 0.03 や 0.06 は使いません)。

4u 検定 ― σ が既知のときの母平均の検定

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. σ(母標準偏差)が問題文で与えられているときに使う。
  2. 「サンプル平均 x̄ を標準化した値」が u₀ で、正規分布の棄却限界値 1.96 と比べる。
  3. 検定後は必要に応じて区間推定も行う。
📖 比喩:標準化は「偏差値への変換」と同じ

学校のテストの点数をそのまま比べても、科目ごとの難しさが違うので不公平です。そこで偏差値(平均50、標準偏差10に変換)に直して比べます。統計の標準化も同じ発想で、どんな正規分布も「平均0、標準偏差1」に変換します。これにより1種類の正規分布表(u 表)だけで確率を調べられます。

🔤 ここで登場する記号
uユー
標準正規分布に従う統計量(標準化された値)。
ドイツ語の Urverteilung(原分布)に由来するという説と “unit normal” の略という説がある。日本の QC 教科書ではこの記号が定着している。

u₀ユー・ゼロ
u 検定の検定統計量。データから実際に計算して求める値。棄却限界値と比べて有意かどうか判定する。
₀(ゼロ)は「H₀ の下で計算した値」を示す。μ₀ の「₀=基準値」とは意味が異なるので注意。u₀・t₀・χ₀²・F₀ はすべて「計算して求める検定統計量」。
検定の5ステップ
1
仮説を立てる

H₀: μ = μ₀  H₁: μ ≠ μ₀(変化があるかどうか知りたいので両側検定)

2
有意水準 α を決める

通常 α = 0.05(5%)。特に危険な誤りを避けたいときは α = 0.01。

3
棄却域 R を定める

両側検定(α=0.05): |u₀| ≥ 1.96  右片側: u₀ ≥ 1.645  左片側: u₀ ≤ −1.645

4
検定統計量 u₀ を計算する

下の公式を使って数値を求める。

5
有意性を判定する

u₀ が棄却域に入れば「有意差あり → H₀ 棄却・H₁ 採択」。

📖 公式の読み方:この式は「サンプル平均が基準値から何σ分離れているか」を数値化している

分子「x̄ − μ₀」:測定した平均と基準値との差。大きいほど変化した可能性が高い。
分母「σ ÷ √n」:サンプル平均のばらつき(標準誤差)。n が大きいほど小さくなり、小さな差でも検出しやすくなる。

u 検定の検定統計量(何σ分離れているかを表す無次元の数値) u₀ = (x̄ − μ₀)÷(σ ÷ √n)
✅ 計算例:μ₀=40.0N, σ=2.5N, n=10, x̄=42.2N で両側検定(α=0.05) u₀ = (42.2 − 40.0) ÷ (2.5 ÷ √10) = 2.2 ÷ 0.79 ≈ 2.78
|u₀| = 2.78 ≥ 1.96 → 棄却域に入る → 有意差あり(H₀ 棄却)
結論:「新工程の強度は従来品と比べて差があるといえる」

5t 検定 ― σ が未知のときの母平均の検定

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. σ が未知のとき、サンプルから計算した不偏分散 V で代用する。
  2. その結果、正規分布ではなく t 分布(正規分布より裾が重い形)を使う。
  3. 自由度 φ = n − 1 で t 表を引いて棄却限界値を求める。
📖 比喩:t 分布は「正規分布より少し太った形」

σ が既知なら x̄ のばらつきは正確にわかります。でも σ の代わりに V(推定値)を使うと「推定の不確かさ」が加わり、端の確率が少し増えます。これが t 分布です。n が増えて V が σ に近づくほど t 分布は正規分布に近づき、n → ∞ でほぼ一致します。

🔤 ここで登場する記号
tティー
t 分布に従う統計量
統計家 William Gosset がギネスビール社に勤務しながら “Student” のペンネームで発表した分布。”Student’s t 分布” と呼ばれ、記号 t は Student のイニシャルから。

t₀ティー・ゼロ
t 検定の検定統計量。データから計算して求める値。
u₀ と同じ命名ルール。₀=「H₀ の下で計算した値」。

φファイ
自由度。t 分布・χ² 分布・F 分布の「形」を決めるパラメータ。1標本のとき φ = n − 1。
英語の degrees of freedom(自由度)に対応するギリシャ文字として日本の教科書で定着。欧米では ν(ニュー)や df と書くことも多い。「自由に動けるデータの数」= n 個中 1 個は x̄ が決まると自動的に定まるため n − 1 になる。
t 検定の検定統計量(自由度 φ = n − 1 の t 分布に従う) t₀ = (x̄ − μ₀)÷(√V ÷ √n)
V = S ÷ (n−1)  S(平方和)= Σxᵢ² − (Σxᵢ)²/n
✅ 計算例:n=12, x̄=81.6N, V=5.17, μ₀=80.0N で両側検定(α=0.05) t₀ = (81.6 − 80.0) ÷ (√5.17 ÷ √12) = 1.6 ÷ 0.656 ≈ 2.44
棄却限界値 t(11, 0.05) = 2.201 → 2.44 ≥ 2.201 → 有意差あり(H₀ 棄却)
結論:「新素材品の強度の母平均は従来品と変わった」
u 検定 vs t 検定:使い分け早見表
比較項目u 検定t 検定
σ の状態既知(問題文に与えられている)未知(サンプルから V を計算)
使う分布標準正規分布(u 表)t 分布(t 表)
自由度不要φ = n − 1
棄却限界値(α=0.05両側)1.96(固定)t(φ, 0.05)(φによって変わる)
共通点手順は同じ5ステップ。式の構造も同じ(分子:差、分母:標準誤差)

6χ²検定 ― 母分散の検定

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. 「平均」ではなく「ばらつき(分散)が変わったか」を検定したいときに使う。
  2. χ²分布は左右非対称(0 以上の値しか取らない)ので棄却域の方向に注意。
  3. χ²(φ, α) の α は「右側(大きい側)にある確率」=上側確率。
📖 前提知識:χ²分布とは

正規分布に従うデータを2乗して足し合わせると χ²分布に従います。分散 V は「データと平均の差の2乗の合計」から作られるので、χ²分布と相性がよく、母分散の検定に使えます。t 分布と同様に自由度 φ = n − 1 で形が変わり、φ が大きくなるほど正規分布に近い形になります。

🔤 ここで登場する記号
χ²カイ二乗
χ²分布に従う統計量。分散の検定に使う。
χ(カイ)はギリシャ文字。「chi-square」は Karl Pearson が1900年に命名。χ を2乗(²)した形の分布という意味。

χ₀²カイ・ゼロ二乗
χ²検定の検定統計量。データから計算して求める値。
u₀・t₀ と同じ命名ルール。₀=「H₀ の下で計算した検定統計量」。

σ₀²シグマ・ゼロ二乗
基準となる母分散。問題文で与えられる既知の値。
σ²(母分散)に ₀ を添えて「H₀ の基準値」であることを示す。μ₀ と同じ命名パターン。例:標準偏差 σ₀=4N が与えられたなら σ₀²= 16。
📖 公式の読み方:この式は「サンプルの分散が基準の分散の何倍か」を調べている

V(サンプルの分散)が σ₀²(基準の分散)より小さければ χ₀² は小さくなり、「ばらつきが減った(改善した)」方向へ動きます。片側検定か両側検定かによって棄却域の位置が変わります。

χ²検定の検定統計量(自由度 φ = n − 1 の χ²分布に従う) χ₀² = (n−1) × V ÷ σ₀² = S ÷ σ₀²
対立仮説検定の種類棄却域使う場面
σ² ≠ σ₀²両側検定χ₀² ≤ χ²(φ, 1−α/2)
または χ₀² ≥ χ²(φ, α/2)
ばらつきが増えたか減ったか不明
σ² > σ₀²右片側検定χ₀² ≥ χ²(φ, α)ばらつきが増えたか確認
σ² < σ₀²左片側検定χ₀² ≤ χ²(φ, 1−α)改善でばらつきが減ったか確認
⚠️ χ²表の読み方:α は「右側の確率(上側確率)」 χ²(11, 0.95) = 4.57 は「右側 95% の境界値」=「左側 5% 点」。左片側検定(ばらつきが減ったか)の棄却域は 小さい側にあるため χ²(φ, 1−α) を使います。
✅ 計算例:n=12, S=56.9, σ₀²=16(σ₀=4N)で左片側検定(α=0.05) χ₀² = 56.9 ÷ 16 = 3.56
χ²(11, 0.95) = 4.57 → 3.56 < 4.57 → 棄却域に入る → 有意(ばらつきが小さくなった)
結論:「新素材品の強度のばらつきは従来品より小さくなった(精度が向上した)」
χ²検定 vs F 検定:用途の違い
比較項目χ²検定F 検定
目的1つの母分散が基準値と違うか2つの母分散が互いに等しいか
使う分布χ²分布(1つの自由度)F 分布(分子・分母の2つの自由度)
統計量χ₀² = S ÷ σ₀²F₀ = V₁ ÷ V₂(大きい方が分子)
自由度φ = n − 1φ₁ = n₁ − 1 φ₂ = n₂ − 1
使い分け「従来品の σ=4N と比べてどうか」など、基準値がある場合「グループAとBのばらつきは同じか」など、2グループを比べる場合

7F 検定 ― 2つの母分散の比の検定

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. 2標本 t 検定の前に「両グループの分散は等しいか(等分散か)」を確認するために行う。
  2. 大きい方の分散を分子に置くことで F₀ ≥ 1 に統一し、F 表の上側だけで判定できる。
  3. 両側検定でも棄却限界値は F(φ₁, φ₂; α/2) で読む。
📖 前提知識:F 分布とはなにか

2つの独立した χ²分布の比から生まれる分布です。F 値は「2つの分散の比」なので、両者が等しければ F ≈ 1、大きく異なれば F が極端に大きくなります。F 分布は「分子の自由度 φ₁」と「分母の自由度 φ₂」の2つを持ちます。

なぜ平均の t 検定の前に F 検定が必要?:2標本 t 検定のプーリング公式は「両グループの σ² が等しい(等分散)」前提で設計されています。等分散でない場合は別の方法(ウェルチの検定)が必要なため、先に確認します。

🔤 ここで登場する記号
Fエフ
F 分布に従う統計量(2つの分散の比)
統計学の巨人 Ronald A. Fisher(フィッシャー)の頭文字 F をとって命名された。分散分析(ANOVA)など幅広い検定で使われる。

F₀エフ・ゼロ
F 検定の検定統計量。大きい方の分散を分子に計算(F₀ ≥ 1 にするため)。
u₀・t₀・χ₀² と同じ命名ルール。₀=「H₀ の下で計算した検定統計量」。
F 検定の検定統計量(V₁ ≥ V₂ となるよう大きい方を分子に置く) F₀ = V₁ ÷ V₂ (V₁ > V₂)
⚠️ F 表の読み方:3つの注意点
  • 分子に大きい方の分散を置く → F₀ は必ず 1 以上になる
  • 両側検定でも棄却限界値は F(φ₁, φ₂; α/2)(片側で見ればよいため)
  • 自由度の順番:分子の φ が先、分母の φ が後。逆に引くと全く違う値になるので要注意
✅ 計算例:ポリマーA(n=9, V_A=171.1)とポリマーB(n=10, V_B=334.5)で両側検定(α=0.05) V_B > V_A なので F₀ = V_B ÷ V_A = 334.5 ÷ 171.1 ≈ 1.95
棄却限界値 F(9, 8; 0.025) = 4.36 → 1.95 < 4.36 → 棄却域に入らない → 有意差なし(等分散と見なせる)
結論:「2種のポリマーの引張強度のばらつきは等しいと見なせる → 次の t 検定へ進む」
💡 F 検定後の流れ
  • 有意差なし(等分散)→ 2つの分散をプーリングして t 検定へ
  • 有意差あり(不等分散)→ ウェルチの検定(QC 2級では詳細は省略可)

82つの母平均の差の t 検定

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. F 検定で等分散を確認してから行う(等分散が前提)。
  2. 2つの分散を合算したプーリング分散 V を使って t₀ を計算する。
  3. 片側検定の棄却限界値は t 表で「2α」の列を参照する(例:α=0.05 → 0.10 の列)。
📖 前提知識:プーリングとは

「プーリング(pooling)」=合わせること。2グループの分散が等しいと確認できたなら、両グループのデータをまとめて1つの分散推定値を作れます。1グループだけのデータよりサンプル数が増えるので、より精度の高い推定ができます。

プーリングした分散(φ_A = n_A−1, φ_B = n_B−1) V = (S_A + S_B) ÷ (φ_A + φ_B) ※ V = (S_A + S_B) ÷ (n_A + n_B − 2) と同じ
2標本 t 検定の検定統計量(自由度 φ = φ_A + φ_B) t₀ = (x̄_A − x̄_B) ÷ √(V × (1/n_A + 1/n_B))
✅ 計算例(ポリマーAとBの平均の差):x̄_A=658.9, x̄_B=645.7, V=257.6, n_A=9, n_B=10 で右片側検定(α=0.05) t₀ = (658.9 − 645.7) ÷ √(257.6 × (1/9 + 1/10)) = 13.2 ÷ 7.37 ≈ 1.79
棄却限界値 t(17, 0.10) = 1.740 → 1.79 ≥ 1.740 → 有意(H₀ 棄却)
結論:「ポリマーAの引張強度の母平均はポリマーBより大きいといえる」
⚠️ 片側検定の t 表の読み方 t 表は「両側確率」で整理されています。右片側検定(α=0.05)では t(φ, 2×0.05) = t(φ, 0.10) の列を引きます。両側検定(α=0.05)なら t(φ, 0.05) の列です。

9対応があるデータの t 検定

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. 同一対象(地域・製品・人)で2条件を測定したデータは「対応あり」。
  2. 差 d = A − B を計算することで、共通要因(地域差など)を消去できる。
  3. 自由度は「対の数 − 1」。F 検定(等分散の確認)は不要
📖 対応があるデータとないデータの違い

対応ない例:工場 A の製品10個 vs 工場 B の別の製品10個 → 独立した2標本 → セクション8の方法

対応ある例:同じ9地区で塗料 A と B を試験 → 地区1の A と地区1の B がペア → 地域差というノイズが d = A − B で消える → このセクションの方法

対応があるデータを無視して独立2標本の t 検定を使うと、地域差が「誤差」に混入して検定の精度が下がります。

🔤 ここで登場する記号
dディー
対応するペアのデータの差(d = x_A − x_B)。ペアごとに計算する。
difference(差)の頭文字 d をそのまま使う。

ディー・バー
差 d の平均(全ペアの差を合計して個数で割る)。
x̄(x の平均)と同じ命名ルール。バー(上線)=「平均」を意味する。

δデルタ
対応ありデータの母平均の差の真の値(μ_A − μ_B)。H₀ は「δ = 0(差がない)」と立てる。
difference の d に対応するギリシャ文字。母集団の値にはギリシャ文字を使う慣習(μ, σ と同じルール)。
対応ありデータの t 検定(自由度 φ = 対の数 n − 1) d̄ = Σdᵢ ÷ n  V_d = S_d ÷ (n−1)  S_d = Σdᵢ² − (Σdᵢ)²/n
t₀ = d̄ ÷ (√V_d ÷ √n)
✅ 計算例:9地区の塗料A・B の差 d の合計=76, Σd²=1428 で両側検定(α=0.05) d̄ = 76 ÷ 9 = 8.4  S_d = 1428 − 76²/9 = 786.2  V_d = 786.2 ÷ 8 = 98.3
t₀ = 8.4 ÷ (√98.3 ÷ √9) = 8.4 ÷ 3.30 ≈ 2.54
棄却限界値 t(8, 0.05) = 2.306 → 2.54 ≥ 2.306 → 有意差あり(H₀ 棄却)
結論:「塗料AとBの耐候性の母平均は異なるといえる」
⚠️ 試験の落とし穴:対応ありの自由度は「対の数 − 1」 n_A = n_B = 9 のとき、独立2標本なら φ = 8+8=16 ですが、対応ありなら φ = 9−1 = 8。各グループの自由度を足した値ではありません。また等分散の F 検定は不要です。

10推定(点推定・区間推定)

🎯 まず覚えるべき3つのポイント
  1. 点推定=1つの値で答える(「μ ≈ 81.6」)。母平均は x̄、母分散は V で推定。
  2. 区間推定=「○○〜○○の間に95%の確率で含まれる」と幅で答える。
  3. 信頼区間は狭いほど良い推定(広いほど良い、は誤り)。
📖 なぜ「区間」で推定するのか

「母平均は81.6です」と1点で答えると(点推定)、サンプルが変わるたびにズレます。そこで「80.2〜83.0 の間に 95% の確率で含まれる」と区間で答えることで推定の信頼性も一緒に伝えます(区間推定)。この 95% を信頼率、区間を信頼区間と言います。

🔤 ここで登場する記号
μ_Uミュー・アッパー
信頼上限。信頼区間の上側の境界値。
U は Upper(上)の頭文字。μ の推定区間の上限なので μ_U。分散なら σ_U²。

μ_Lミュー・ロウワー
信頼下限。信頼区間の下側の境界値。
L は Lower(下)の頭文字。分散なら σ_L²。
母平均の区間推定(σ 既知)
📖 この式は「x̄ を中心に ±1.96×標準誤差 の幅を取る」という意味

正規分布では平均 ±1.96σ の範囲に全体の 95% が収まります。サンプル平均 x̄ の分布も同様で、幅は σ/√n(標準誤差)です。α=0.05 なら u(0.05)=1.96 を使います。

母平均の 95% 信頼区間(σ 既知) μ_U = x̄ + 1.96 × σ/√n  μ_L = x̄ − 1.96 × σ/√n
✅ 計算例:x̄=42.2N, σ=2.5N, n=10 の 95% 区間推定 1.96 × 2.5/√10 = 1.96 × 0.79 ≈ 1.55
μ_U = 42.2 + 1.55 = 43.75N  μ_L = 42.2 − 1.55 = 40.65N
結論:「真の母平均は 40.65N〜43.75N の間に 95% の確率で存在する」
母平均の区間推定(σ 未知)
母平均の 95% 信頼区間(σ 未知・φ=n−1 の t 分布を使う) μ_U = x̄ + t(φ, α) × √V/√n  μ_L = x̄ − t(φ, α) × √V/√n
✅ 計算例:x̄=81.6N, V=5.17, n=12 の 95% 区間推定 t(11, 0.05) = 2.201、√5.17/√12 ≈ 0.657
幅 = 2.201 × 0.657 ≈ 1.45
μ_U = 81.6 + 1.45 = 83.05N  μ_L = 81.6 − 1.45 = 80.15N
母分散の区間推定
📖 この式は「χ²分布を使って分散の範囲を逆算する」という意味

χ₀² = S/σ² が χ²分布に従うことを利用して、σ²(未知)の範囲を求めます。χ²分布は左右非対称なので、上限と下限で別々の χ²値を使います。

母分散の 95% 信頼区間 σ_U² = S ÷ χ²(φ, 1−α/2)  σ_L² = S ÷ χ²(φ, α/2)
📖 信頼区間の幅が変わる3つの要因
  • n が大きくなる → 分母 √n が増える → 幅が狭くなる(精度アップ)
  • σ が小さくなる → そもそものばらつきが小さい → 幅が狭くなる
  • 信頼率を 95% → 99% に上げる → 棄却限界値が 1.96 → 2.576 に増える → 幅が広くなる
⚠️ 試験の落とし穴:「幅が広いほど確かな推定」は誤り 幅が広い=どこに真の値があるか絞れていない=精度が低い。幅が狭いほど精度の高い(良い)推定です。

11試験直前チートシート

検定の使い分け早見表
状況使う検定分布自由度
1つの母平均を検定・σ 既知u 検定標準正規分布不要
1つの母平均を検定・σ 未知t 検定t 分布φ = n − 1
1つの母分散を検定χ²検定χ²分布φ = n − 1
2つの母分散の比を検定(等分散確認)F 検定F 分布φ₁=n₁−1, φ₂=n₂−1
2つの母平均の差を検定(σ² 等しい)2標本 t 検定t 分布φ = φ_A + φ_B
対応があるデータの平均の差を検定対応あり t 検定t 分布φ = 対の数 − 1

棄却限界値(α=0.05)

  • u(両側) ±1.96
  • u(片側) 1.645
  • t(10, 0.05) 2.228
  • t(11, 0.05) 2.201
  • t(16, 0.05) 2.120
  • t(17, 0.10) 1.740

記号の命名ルール

  • 母集団の値 ギリシャ文字(μ, σ, φ…)
  • 基準値の添え字 ₀(μ₀, σ₀²)
  • 検定統計量の添え字 ₀(u₀, t₀, F₀…)
  • 信頼上限 U(μ_U, σ_U²)
  • 信頼下限 L(μ_L, σ_L²)
  • 差・平均の差 d, d̄, δ

2標本検定の手順

  • ① F 検定 等分散を確認
  • ② 等分散なら 分散をプーリング
  • ③ t 検定 平均の差を判定
  • 等分散でなければ ウェルチの検定
  • 対応ありなら F 検定スキップ

区間推定のポイント

  • n ↑ → 幅 狭くなる ✅
  • σ ↓ → 幅 狭くなる ✅
  • 信頼率 ↑ → 幅 広くなる
  • 狭い方が 精度が高い
⚠️ 試験で落とし穴になりやすいポイント TOP 7
  1. H₀ が棄却できない ≠「等しい」→「差があるとはいえない(証拠不十分)」
  2. β は検定前に指定しない(指定するのは α だけ)
  3. 有意でなくても推定は行える(検定と推定は独立)
  4. 信頼区間は「幅が狭いほど精度が高い良い推定」(広いほど、は誤り)
  5. 対応ありデータの自由度 = 対の数 − 1(各グループの自由度の和ではない)
  6. 対応ありデータでは F 検定(等分散確認)は不要
  7. F 検定では大きい方の分散を分子に置く(分母ではない)

12練習問題でチェック

〇✕クイズ:正しければ〇、誤りなら✕

Q1. H₀ が採択されたとき「μ = μ₀ と等しい」と積極的に断言できる。

✕ 「差があるとはいえない(証拠不十分)」が正しい。等しいとは断言できません。裁判で「無罪」でも「無実(潔白が証明された)」とは限らないのと同じです。

Q2. 有意水準 α を小さくすると、第2種の誤りを犯す確率 β は大きくなる。

〇 α と β はトレードオフです。α を小さく(厳しく)すると棄却域が狭まり、差があっても「有意なし」と見逃す確率(β)が増えます。

Q3. 検定で有意にならなかった場合、推定を行っても意味がない。

✕ 有意でないときや検定を目的としないときでも、推定だけを行うことがあります。検定と推定は独立しています。

Q4. 95% 信頼区間が 80.2〜83.0 であることは「真の値がこの区間内にある確率が 95% である」ことを意味する。

〇 正確には「この手順で区間を作れば 100 回中 95 回は真の値を含む」ですが、QC 検定の実務レベルでは上記の解釈で正解とされます。

Q5. 対応があるデータの t 検定では、等分散の検定(F 検定)を先に行う必要がある。

✕ 対応があるデータの場合、等分散の検定は不要です。差 d を計算することでグループを「1標本」として扱うからです。

Q6. 信頼区間の幅は n(サンプルサイズ)が大きいほど狭くなる。

〇 幅は σ/√n に比例するため、n が大きくなると √n も大きくなり、幅は狭くなります(精度アップ)。

Q7. F 検定では、分散の大きい方を分母にして F₀ を計算する。

✕ 大きい方を分子に置きます。こうすることで F₀ ≥ 1 に統一され、F 表の上側確率(片側)だけで判定できます。

Q8. 対応ありデータで n_A=n_B=9 のとき、t 検定の自由度は 8+8=16 である。

✕ 対応ありの場合、自由度は「対の数 − 1 = 9 − 1 = 8」です。各グループの自由度を足した 16 は独立2標本のときの値です。

Q9. t 検定(α=0.05, 右片側)の棄却限界値は t(φ, 0.05) の列から読む。

✕ t 表は両側確率で整理されています。右片側検定(α=0.05)では t(φ, 0.10)(= 2α の列)を参照します。

Q10. u 検定と t 検定の最大の違いは、σ(母標準偏差)が既知か未知かである。

〇 σ が既知なら標準正規分布(u 表)を使う u 検定、未知なら t 分布(t 表)を使う t 検定です。計算手順の5ステップ自体は同じです。
© QC検定2級合格ガイド | 参考:尾島善一著『統計的方法の基礎:ベーシックコーステキスト』日本科学技術連盟・手法5章「計量値データに基づく検定と推定」
タイトルとURLをコピーしました