「退職金が入ったら、さっそく新NISAで運用を始めよう」と考えていませんか? 実は、いきなり投資を始めるのは非常に危険です。
まずは自分の現状を正確に把握し、「いくら投資に回していいのか」を判断するための基準を作る必要があります。今回は、老後を迎える前に必ずやっておくべき5つのステップを解説します。
収入を把握する(100歳までのロードマップ)
まずは、退職から100歳までの「定期的な収入」をすべて書き出しましょう。
- 公的年金: 最も重要な収入源です。「年金定期便」に記載されている額は現在の加入実績のみであることが多いため、「ねんきんネット」を活用して将来の受給見込額を試算するのがおすすめです。
- 個人年金・企業年金: 自分が受け取れる種類と期間を確認しましょう。
【ポイント】年金の「手取り」計算 年金からは税金や社会保険料が引かれます。さらに将来的な目減り(マクロ経済スライド)も考慮し、試算額の約72%を実質的な手取り収入として見積もっておくと安心です。
支出を把握する(生活レベルの維持)
次に、現在の生活レベルを維持した場合、老後にいくらかかるのかを計算します。
世帯人数が変わる場合(子供の独立など)は、以下の計算式で調整できます。
- 1人分の生活費 = 現在の生活費 ÷ √現在の人数
- 将来の生活費 = 1人分 × √将来の人数
老後は「貯蓄」を考える必要はありませんが、収入よりも支出が多くなるのが一般的です。その差額(不足分)を貯蓄からいくら取り崩すかを把握することが重要です。
不足の事態に備える(「予備費」の確保)
投資に回してはいけない「聖域」の資金を確保します。
- 生活防衛資金: 1人100万円(夫婦で200万円)程度。急な故障や冠婚葬祭に備えます。
- 医療費・介護費: 1人1,000万円(医療500万+介護500万)が目安です。 ※夫婦の場合、お互いに助け合える面もあるため、合わせて1,000万〜1,500万円程度を最低ラインとして確保しておくと良いでしょう。
「1年を超える支出」を書き出す
毎月の生活費には含まれない、数年おきの大きな出費を予測します。
- 住宅リフォーム: 屋根・外壁の修繕、水回りの交換など(数百万円単位)。
- 車の買い替え: 100歳までにあと何回買い替えるか。
- イベント・旅行: 家族旅行や趣味の予算。
これらが見えないと、せっかくの運用計画が途中で崩れてしまいます。目安として、一般家庭では総額1,000万円程度を見込んでおくと現実的です。
リタイア時の総資産を確認する
最後に、退職時に持っている資産をすべて合計します。
- 預貯金、保険の満期金
- NISA、iDeCo、企業型DC
- 退職金
これらの合計額から、ステップ3と4で算出した「備えのお金」を引き、残った額が「長期運用に回せるお金」となります。
まとめ:まずは「絶望」を直視することから
これらを計算すると、多くの人が「今のままでは足りない」という事実に直面します。しかし、それを知ることが第一歩です。
足りないことがわかれば、
- 支出を調整する
- 長く働いて収入を増やす
- 新NISAなどを活用してインフレに負けない運用を取り入れる
といった具体的な対策が打てるようになります。 退職金という大切なお金を守り、増やすために、まずはペンとノートを持って「書き出す時間」を作ってみてください。

