私たちの健康や生活環境を守るためには、目に見えない「水」や「土」の汚染を防ぐ厳格なルールが必要です。今回は、日本の環境規制の柱である「水質汚濁防止法」と「土壌汚染対策法」について、近年の法改正も踏まえて分かりやすく解説します。
水質汚濁防止法:排水と地下水を守る
1970年に制定されたこの法律は、工場や事業場からの排水を規制し、公共用水域と地下水の水質を保全することを目的としています。
排水規制の2つの柱
工場(特定事業場)からの排水には、大きく分けて2つの基準が適用されます。
- 健康項目: カドミウムやシアンなどの有害物質。排水量に関わらず、すべての特定事業場に適用される厳しい基準です。
- 生活環境項目: pH(水素イオン濃度)やBOD(生物化学的酸素要求量)など。1日の平均排水量が50立方メートル以上の事業場に適用されます。
さらに、東京湾や瀬戸内海のような閉鎖性海域では、個別の濃度規制だけでは不十分なため、汚濁物質の「総量」そのものを制限する「総量規制」が導入されています。
地下水汚染への対策
かつては「地下水は汚れない」と考えられていた時期もありましたが、1980年代の汚染問題を受け、現在は有害物質を含む水の地下浸透は原則禁止されています。2011年の改正では、施設の構造や定期点検が義務化され、未然防止が強化されました。
事業者の厳しい責任(無過失責任)
もし工場からの排水で人の健康に被害が出た場合、事業者は「過失がなくても」損害を賠償する責任(無過失責任)を負います。また、測定データの改ざんには厳しい罰則が設けられています。
土壌汚染対策法:土地に潜むリスクを管理する
土壌汚染は目に見えず、長期にわたって蓄積されるため、2002年にこの法律が制定されました。
調査が必要になるタイミング
土地を所有しているだけで調査が求められるわけではなく、主に以下のタイミングで調査が必要になります。
- 有害物質を使用していた工場を廃止するとき
- 一定規模(3,000㎡以上)の土地の形質変更を行う際、汚染の恐れがあるとき
- 健康被害の恐れがあると知事が判断したとき
区域の指定と管理
調査の結果、汚染が見つかった土地は2つに分類されます。
- 要措置区域: 健康被害の恐れがあり、除去などの「措置」が必要な場所。原則、土地のいじり(形質変更)は禁止されます。
- 形質変更時要届出区域: すぐに被害が出るわけではないが、工事などをする際には届け出が必要な場所。
農用地や農薬に関する独自ルール
工業用地だけでなく、私たちの食べ物を育む「農地」にも専用の法律があります。
- 農用地土壌汚染防止法: 特に「カドミウム・銅・砒素(ひそ)」の3物質を特定有害物質として指定し、農地の安全を守っています。
- 農薬取締法: 農薬が原因で土壌が汚染されないよう、登録制度や使用規制を行っています。
まとめ:進化を続ける環境法
これらの法律は一度作って終わりではなく、時代とともに強化されています。
- 2010年~2011年: データの改ざん防止や地下水汚染の未然防止を強化。
- 2017年: 土壌汚染のリスクに応じた規制の合理化や、汚染情報の把握をさらに推進。
私たちの豊かな自然環境は、こうした緻密な規制と、事業者の責任ある行動によって支えられています。

