【一般】ステップ1:ファイナンシャルプランニング
固定消費 | 固定投資 | 変動消費 | 変動投資 | |
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ステップ1 ファイナンシャルプランニング | 税金/保険 | 貯蓄/運用 | 生活/遊行 | 事業/教育 |
ステップ2 戦略選定 | 税金/保険 | 貯蓄/運用 | 生活/遊行 | 事業/教育 |
ステップ3 商品選定 | 税金/保険 | 貯蓄/運用 | 生活/遊行 | 事業/教育 |
ステップ4 購入方法選定 | 税金/保険 | 貯蓄/運用 | 生活/遊行 | 事業/教育 |
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会計(accounting)とは、お金の出入りを記録することをいいます。主に企業を対象として行われるものですので自身が経営をする場合にはもちろんですが、「必要な時に必要な金額を用意する」というファイナンシャルプランニングの目的のためには、まずは今の財務状況を確認すること(財務会計)、そして出入りを管理すること(管理会計)は必要不可欠ですので、会計の考え方や手法を学んでいきましょう。
〈工程別〉記帳の方法
簿記一巡とは、会計始まりから終わりまでの工程のことです。図表のように、期中の営業手続きでは、証憑を元に仕訳帳または伝票に仕訳し、それを総勘定元帳に転記した後に残高試算表に集計します。決算手続では、最終的に財務諸表(計算書類)に編集し、帳簿は締め切ります。
図表:簿記一巡

企業では会計期間ごとの儲けや貸借の状況をまとめる決算という手続きを決算日を設けて行わなければならず、表1の手順で進め(本支店会計の場合は、各本支店で②決算整理まで進め、合算や相殺削除を行ってから本支店合併財務諸表を作成します)、②の決算整理をする項目は表2のものがあります。
表1:決算の手順
- 試算表の作成
- 決算整理
- 精算表の作成
- 財務諸表の作成
- 帳簿の締切
表2:日商簿記2級までで出題される決算処理項目
- 現金過不足の整理
- 当座貸越の振り替え
- 貯蔵品の振り替え
- 当座預金残高の修正
- 売上原価の算定
- 有価証券の振替え
- 引当金の設定
- 有形固定資産の減価償却
- 無形固定資産の償却
- ソフトフェアの償却
- 費用・収益の未払い・前払いと未収・前受け処理
上記の工程は誘導法を基本としていますが、決算では棚卸法も用いています。
財務諸表への編集
財務諸表とは、決算日時点の財務状況をまとめた計算書の総称です。会社法及び会社計算規則では、「計算書類」と呼んでいて、「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「注記表」の作成を企業に義務づけています。また、「貸借対照表」「損益計算書」、それから「キャッシュフロー計算書」の3つは「財務三表」と呼ばれています。
貸借対照表
貸借対照表(B/S;Balance Sheet)は、決算日時点の財務状態の内訳を記載した財務諸表の一つです。図表のように、形式は主に借方と貸方を分けて縦横に並べた勘定式で「資産の部」、「負債の部」、「純資産の部」の3つが記載され、また資産と負債は流動項目と固定項目とにそれぞれ分類します。
図表:貸借対照表のひな型

流動/固定分類は、財務流動性により判断します。財務流動性とは、すぐに支払手段となりうる資産やすぐに支払いが必要となる負債を流動性が高いもの、すぐには支払手段となりえない資産やすぐには支払いが必要とはならない負債を流動性が低いものとする考え方です。
貸借対照表の資産、負債を流動・固定で区分する理由として、特に重要なのは、財務分析上有用な情報、「債務弁済能力」を提供することができるからです。とりわけ重要なのが財務流動性で、すぐに支払いが必要となる負債(流動負債)が、すぐに支払手段となりうる資産(流動資産)によってどれだけカバーできているかという流動比率(図表)が計算できます。
図表:流動比率の算出式
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
財務流動性の基準には、図表のように、正常循環基準と一年基準があり、正常循環基準を優先させます。醸造に1年を超えるワインも、長いとはいえ正常循環内ですので流動資産、一般には固定資産に分類される不動産も、不動産業であるなら流動資産に分類され、そのことで企業間比較のうえで有用な分析ができます。
貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えてすべての返済が終了するような分割返済の借入金の場合、1年以内に返済される元金は流動負債、1年を超えて返済される元金は固定負債にそれぞれ記載します。また、1年以内に返済される部分は、「1年以内返済長期借入金」という科目で流動負債に記載するのが原則とされますが、便宜上短期借入金に含めることもあります。
図表:財務流動性の基準
- 正常循環基準
現金投下→商品販売→売掛金回収といった、正常な循環の過程にある項目はすべて一律に流動項目とする。
例)受取手形、支払手形、売掛金、買掛金、商品、製品、仕掛品、原材料、前渡金、前受金など - 一年基準(one year rule)
貸借対照表日(決算日)の翌日から起算して1年以内に回収/支払いが行われるものを流動項目とする。
例)現金、普通預金、前払費用、未払費用、貸付金、借入金、未収収益、預り金 - その他
建物、土地、備品、車両など:基本的には固定資産
有価証券:保有目的による
区分の内訳として記載される科目の中には、その表示箇所の定位置なるものがあります。図表にまとめたように、流動資産では、現金預金→受取手形→売掛金→有価証券→商品の順番があり、有形固定資産、投資その他の資産、流動負債、株主資本も同様です。これらの定位置があるのは、その科目は使用頻度が高いからであるといえます。マイナス金額の表示になる貸倒引当金、減価償却累計額、自己株式は各区分の最後に来ることが多く、金額欄にはマイナスを意味する”△”が表示されます。
図表:表示定位置がある貸借対照表科目

資産の分類

自己資本比率は、総資本に対する自己資本(純資産)の割合を表す指標(自己資本/総資本=自己資本比率)です。会社の資本調達の方法には表2のように、経営権を譲渡する出資(元手)や自身の事業の儲け(利益)により資金調達をした自己資本と、利息をつけて返済する融資により資金調達した他人資本があり(この自己資本と他人資本の2つをまとめて総資本と言ったりもしますがともあれ)、自己資本比率が高いほど、自己資本(純資産)が厚い運営といえ、投資や事業へ返済の必要がない自由に使えるお金が多いことから、外部からの評価を得やすくなりますので、純資産(自己資本)については貸借対照表だけでなくさらに詳しくその変動を表す株主資本等変動計算書が作られるのです。
表2:資産調達の方法

損益計算書
損益計算書(P/L;Profit and Loss statement)は、収益から費用を差し引いた「利益」を計算した財務諸表の一つです。図表のように主に借方と貸方を分けずに縦に並べた報告式で「売上高」「売上原価」「販売費および一般管理費」「営業外収益」「営業外費用」「特別利益」「特別損失」の7つが記載され、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前純利益」「当期純利益」が計算されます。
図表:損益計算書のひな型

表1:損益計算書の計算項目

- 売上総利益=売上高-売上原価
本業の収益である「売上」から、本業の費用である「売上原価」を差引いたもので、「粗利」ともいいます。売上原価は、「期首棚卸高」「仕入」「△期末棚卸高」の内訳項目を記載することが多いですが、会計規則上は記載不要とされています。 - 営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
売上総利益から、売上原価以外で主たる営業活動(本業)から定期(経常)的に生じる費用である「販売費および一般管理費」を差引いたものです。販売費および一般管理費は、略して「販管費」といったり、その意味から単に「営業費」といったりもし、具体的には、広告宣伝費、給料、水道光熱費などがあたります。 - 経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
営業利益から、営業活動以外で経常的に生じた(副業の)損益を加減したものです。資金調達や資産運用といった財務活動などがあたります。 - 税引前当期利益= 経常利益+特別利益-特別損失
経常利益から、臨時または突発的な損益を加減したものです。自然災害による損益、滅多に取引きしないような固定資産や投資有価証券の損益などがあたります。 - 当期利益(純利益)= 税引前当期利益-(法人税+法人住民税+法人事業税)±法人税等調整金
税引前当期利益から、法人税、法人住民税、法人事業税(3つのことを法人税等ともいう)を差引いたものですが、会計上と税法上の法人税等の計算は異なる点もあるためそれを調整した法人税等調整額も記載されます。
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書(S/S;Statements of Shareholder’s equity)は貸借対照表のうち純資産の変動を表す財務諸表であり、貸借対照表の純資産の部について項目毎に当期首残高、当期変動額、当期末残高の3つが記載されます。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は貸借対照表のうち現金預金の変動を表す財務諸表であり、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに区分しています。
金融機関からの借入による資金調達は財務活動によるキャッシュフローに反映されます。
注記表
注記表は、他の財務諸表本体の記載事項を補足説明をまとめた財務諸表の一つです。採用した会計処理の方法、補足的情報の表示などが記述され、注記表に記載する項目は、会社計算規則に定められています。
残高集計表への集計
清算表は、残高試算表、決算整理、貸借対照表、損益計算書をひとつにまとめた表で、形式は行には勘定科目、列には上記の4つの表でそれぞれ借方と貸方が配置されます。
総勘定元帳への転記
仕訳帳への仕訳
購入
売買記帳処理方法には、表1のように三分法、売上原価対立法、分記法、総記法と4種類あります。売上高の把握が必要な商品売買では三分法や売上原価対立法、そうではないことが多い有価証券や固定資産の売買では分記法や総記法が使われることが多く、また原価や単価が分かりづらいものは決算時に算定する三分法や総記法、分かりやすいものは売上原価対立法や分記法が用いられやすいようです。
表1:売買記帳処理方法

ところで、代金の支払い方法については表2のような方法があります。
表2:決済方法
- 現金
- 普通預金・当座預金・別段預金
- 売掛金・買掛金
- クレジット売掛金・クレジット買掛金
- 受取手形・支払手形
- 営業外受取手形・営業外支払手形
- 電子記録債権・電子記録債務
- 前渡金・前受金
決済手段の主流はやはり預金、とりわけ預金金額全部が保護され、小切手の振出もできる当座預金が多くみられます。取引頻度が多いからこそ、自社の帳簿と銀行残高証明書の残高が合わないときもあることから、不一致の原因を特定して表3のように銀行勘定調整表を用いて管理します。
表3:預金残高の管理(銀行勘定調整表)

修正仕訳 | |
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時間外預入 | 仕訳なし |
未取立小切手 | 仕訳なし |
未取付小切手 | 仕訳なし |
連絡未通知 | (当座預金)10/(売掛金)10 |
誤記入 | (売掛金)5/(当座預金)5 |
未渡小切手 | (当座預金)10/(未払金)10 |
クレジット払いとは、信販会社を通して行う決済のことです。クレジットカードが代表ですが、PayPayなどのキャッシュレス決済全般も含み、販売側は通常の掛け払いと違い確実に回収できるなどメリットがある反面、信販会社への手数料が発生するデメリットがあることから、表5のように記帳では支払手数料勘定[費用]を計上します。
表5:クレジット払いの処理
仕入 | 売上 | |
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引渡時 | (仕入)100/(クレジット買掛金)100 | (クレジット売掛金)98 (支払手数料)2/(売上)100 |
支払時 | (クレジット買掛金)100/(当座預金)100 | (当座預金)98/(クレジット売掛金)98 |
商品以外のものの手形購入と売却
購入 | 売却 | |
---|---|---|
引渡時 | (建物)100/(営業外支払手形)100 | (営業外受取手形)100/(建物)100 |
支払時 | (営業外支払手形)100/(現金)100 | (現金)100/(営業外受取手形)100 |
ところで債権譲渡という、債権を第三者に譲渡することもできます。表5のように処理しますが、特に手形の場合は早期に資金回収ができる裏書譲渡や銀行に譲渡するなら割引きといいます。
表5:債権譲渡

当事者間でも変動が起こることもあります。例えば表6のように売掛金を電子記録債権や受取手形にしたり、相殺したり、期日変更のために新しい手形を発行する更改したりする場合があります。
表6:当事者間での債権変動

手形の支払期日に遅れる不渡りが起きたときは表7のように処理します。不渡りに関する費用は、手形の発行者に請求できるので、不渡り手形の金額には手形代金の他に不渡りに関する諸費用も含めます。
表7:不渡手形の処理
不渡時 | (不渡手形)110/(受取手形)100 (現金)10 |
回収時 | (現金)110/(不渡手形)110 |
本支店会計・本社工場会計
支店や工場が設置してある場合の会計制度をそれぞれ、本店支店会計、本社工場会計といいます。本店支店会計は本店勘定と支店勘定、本社工場会計では本社勘定と工場勘定を用いて処理しますが、本店勘定と支店勘定、本社勘定と工場勘定は貸借で残高が一致する照合勘定です。
本店と支店がある場合の会計制度である本支店会計の処理は、本店だけに帳簿をおいて本店が一括処理する本店集中会計制度と、支店にも帳簿をおいて支店のものは支店が処理する支店独立会計制度がありますが、支店独立会計制度についてみいていきます。
現金の送付
例えば本店から支店に現金の送るときは次のように処理します。
本店側 | (現金)を(支店)に処理する。 例)(支店)100/(現金)100 |
支店側 | (本店)を(現金)に処理する。 例)(現金)100/(本店)100 |
本店の買掛金を支店が支払ったときは次のように処理します。
本店側 | (買掛金)を(支店)に処理する。 例)(支店)100/(買掛金)100 |
支店側 | (本店)を(現金)に処理する。 例)(現金)100/(本店)100 |
本店が支店に商品を送ったときは次のように処理します。
本店側 | (仕入)を(支店)に処理する。 例)(支店)100/(買掛金)100 |
支店側 | (本店)を(仕入)に処理する。 例)(現金)100/(本店)100 |
支店が本店に営業費を現金で支払ったときは次のように処理します。
本店側 | (支店)を(営業費)に処理する。 例)(営業費)100/(支店)100 |
支店側 | (現金)を(本店)に処理する。 例)(本店)100/(現金)100 |
本社会計の独立とは、製造に関する勘定のみを工場の帳簿に移して工場でこれらの勘定に関する取引を記入することです。ただし、経費勘定や製品勘定は本社に設置することもあるので注意が必要です。工場が直接取引をした場合も、本社を通して行ったものとします。
本社が材料を購入し、工場に送った時の仕訳
本社:(工場)100/(買掛金)100
工場:(材料)100/(本社)100
工場で材料を消費した時の仕訳
本社:仕訳なし
工場:(仕掛品)60
(製造間接費)40/(材料)100
工場で製品が完成し、本社に納入した時の仕訳
本社:(製品)80/(工場)80
工場:(本社)80/(仕掛品)80
本社が製品を売り上げたときの仕訳
本社:(売掛金)120/(売上)120
(売上原価)80/(製品)80
工場:仕訳なし
売却
別途帳簿をつけている場合には、払出単価からも売上原価を算出できます。同じ商品でも買付けた時期や場所が違えば単価が変わることがあるため、払出単価という、どの仕入単価で払い出すのかを表3のような方法から選択し、払出単価に払出数量を乗じたものの合計が売上原価になります。
表3:払出単価の決定
- 先入先出法・・・先に仕入れたものから先に売り上げる。
- 平均法
- 移動平均法・・・仕入れた都度で平均単価を求める。
- 総平均法・・・一定期間における平均単価を求める。

外貨換算会計
外貨換算会計は、外貨建取引の外国通貨表示額を自国通貨(円)表示に変更する会計処理のことで、表1のように外国通貨表示額に為替相場を乗じて求め、また為替相場には発生時為替相場(HR;Historical Rate)と決算時相場(CR;Current Rate)があり、表1のようにすべての項目で発生時に発生時為替相場、貨幣項目についてはさらに決算時にも決算時相場で自国通貨に換算替えの処理をします。
表1:自国通貨換算
自国通貨表示額[円他]
=外国通貨表示額[ドル他]×為替相場[ドル他/円他]
50ドルを1ドル120円のときに換算すると50ドル×120円/ドル=6,000円となります
表2:為替予約を付していない場合の仕訳け
前払金の支払い | 自国通貨表示額で(現金)等を(前払金)に処理します。 $表示例)(前払金)10/(現金)10 ¥表示例)(前払金)800/(現金)800 ※1ドル=80円 |
取引時 | 自国通貨表示額で(前払金)と(買掛金)等を(仕入)等に処理します。 $表示例)(仕入)100/(前払金)10 (買掛金)90 ¥表示例)(仕入)10,000/(前払金)800 (買掛金)9,200 ※1ドル=100円 |
決済時 | 自国通貨表示額でを(現金)等を(買掛金)等に処理し、差額を(為替差損益)で計上します。 $表示例)(買掛金)90/(現金)90 ¥表示例)(買掛金)9,200 (為替差損益)1,600/(現金)10,800 ※1ドル=120円 |
為替相場の変動によって生じる不確実性(risk)を回避(hedge)するため、あらかじめ決済時の相場を契約で決めておく為替予約をすることで表3のように処理されるため為替差損益が発生しなくなります。ただし、為替予約を取引発生後に付した場合は、表4のようにその付したときに先物為替相場で換算替えを行います。
表3:為替予約を取引時に付した場合の仕訳け
取引時 為替予約時 | 自国通貨表示額で(前払金)と(買掛金)等を(仕入)等に処理します。 $表示例)(仕入)100/(買掛金)100 ¥表示例)(仕入)10,000/(買掛金)10,000 ※1ドル=100円 |
決算時 | 仕訳なし |
決済時 | 自国通貨表示額でを(現金)等を(買掛金)等に処理します。 $表示例)(買掛金)100/(現金)100 ¥表示例)(買掛金)10,000/(現金)10,000 ※1ドル=120円 |
表4:為替予約を取引後に付した場合の仕訳け
取引時 | 自国通貨表示額で(前払金)と(買掛金)等を(仕入)等に処理します。 $表示例)(仕入)100/(買掛金)100 ¥表示例)(仕入)10,000/(買掛金)10,000 ※1ドル=100円 |
為替予約時 | 取引時の買掛金残高とその為替予約時の自国換算額との差額を(為替差損益)で計上します。 $表示例)仕訳なし ¥表示例)(為替差損益)1,000/(買掛金)1,000 ※1ドル=110円 |
決済時 | 自国通貨表示額でを(現金)等を(買掛金)等に処理します。 $表示例)(買掛金)100/(現金)100 ¥表示例)(買掛金)11,000/(現金)11,000 ※1ドル=120円 |
帳簿の開始手続きと締切手続き
帳簿の締切とは、各勘定の残高を0にする処理のことです。
開始手続き及び締切手続きには、大別して大陸式と英米式の2つの方法があります。仕訳から転記して総勘定元帳を作るという簿記の基本的な記帳ルールに対して、大陸式はすべての局面において実施するのに対して、英米式は弾力的に仕訳をしないことも一部認めます。
開始手続き
開始手続きとは、新しい会計期間の最初(期首)に行う手続きのことです。開始手続きで行うのは、開始記入と期首再振替の二つの手続きでどちらも必須です。
開始記入とは、新しい会計期間を開始させるにあたり、総勘定元帳において、各勘定の最初の行に前期末の残高を期首残高として記入する手続きです。期首残高を記入する必要があるのは、資産・負債・純資産で、収益と費用は期間ごとに0からのスタートです。記載方法は図表の通りです。
図表:開始手続きの記載方法

締切手続き
収益・費用の締切り
(損益)勘定を用いて、収益の各勘定の残高は借方、費用の各勘定の残高は貸方に振り替える損益振替で、各勘定における借方と貸方が一致(二重線を引きます)、残高が0になります。
当期純利益の締切り
(損益)勘定を用いて、当期純損失の場合は借方、当期純利益の場合は貸方に振り替える資本振替で、(繰越利益剰余金)における借方と貸方が一致(二重線を引きます)、残高が0になります。
本支店会計の場合は、本店と支店それぞれの当期純損益を本店に設けた総合損益勘定に損益振替します。
<支店>
(損益)150/(本店)150
<本店>
+(損益)1,040/(総合損益)1,040
+(支店)150/(総合損益)150
=(損益)1,040・(支店)150/(総合損益)1,190
また、当期純利益は会社全体の利益から法人税等を引いたものであるので、法人税等を総合損益勘定に振り替える必要があります。
+(損益)1,040・(支店)150/(総合損益)1,190
+(総合損益)500/(法人税等)500
=(損益)1,040・(支店)150/(総合損益)690・(法人税等)500
それで算定された会社全体の当期純損益は繰越利益剰余金勘定に資本振替します。
(総合損益)690/(繰越利益剰余金)690
資産・負債・純資産の締切り
(次期繰越)勘定を用いて、資産の各勘定の残高は借方、負債・純資産の各勘定の残高は貸方に振り替えることで、各勘定における借方と貸方が一致(二重線を引きます)、残高が0になります。締め切った後、(次期繰越)の逆側に(前期繰越)と金額を記入します。
証憑を集める
仕訳をするための記録を取得する方法
〈目的別〉記帳の方法
会計の目的は、財務会計(financial accounting)と管理会計の大きく二つに分けられます。図表のように、企業の経済活動の内容とその結果を企業の外部の利害関係者に報告するものが財務会計、内部の経営管理者が経営管理に活用するものが管理会計とされます。
図表:会計の目的
財務会計 | 管理会計 | |
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対象者 | 外部の利害関係者 | 内部の経営管理者 |
目的 | 財務状況を報告する | 経営管理に活用する |
財務会計
固定長期適合率(%)とは、長い間にわたり事業に使う固定資産に投じた金額が、どれだけ安定した資金で賄えているかを表す指標で、「固定資産÷(固定負債+自己資本)×100で求めます。
管理会計
会計の目的として、その他にも営利目的か否かによる企業会計/非営利会計という観点もあります。また、法の規制を受けるか否かによる制度会計/非制度会計、その規制を受ける法により会社法会計、金融商品取引法会計などの分類もあります。
財務会計における利害関係者は、金銭的な面で特に強力な利害関係を有している者であり、株主、債権者及び投資家が主な利害関係者として位置づけられています。図表のように、彼らの関係図をまとめることができます。企業が、会計の知識の全くない素人にまで理解できるような情報を出すとなると、企業の側にとってはとんでもない労力が必要となってしまうので、玄人である投資家を想定します。

会計規則作成のアプローチとして、演繹的アプローチと帰納的アプローチがあります。
図表1:演繹的アプローチと帰納的アプローチ
演繹的アプローチ (トップダウン・アプローチ) | 学問的推定から目的を決定、それを規則に具体化させること。 目的に沿った規則にしやすい反面、事例に沿ぐわないこともある。 |
帰納的アプローチ (ボトムアップ・アプローチ) | 実務的慣習から事例を抽出、それを規則に抽象化させること。 事例に沿った規則にしやすい反面、目的に沿ぐわないこともある。 |
財務会計×演繹的アプローチ
財務会計の目的、機能、利益の特質には、図表のように、誰にいくら配分するかが大事な会計責任説→利害関係調整機能→分配可能性の伝統理論がありましたが、適正化期間損益計算が大事な意思決定有用性理論→情報提供機能→業績指標性の現代理論が主流となりました。
図表:財務会計の目的、機能、利益の特質

財務会計×制度会計
財務会計は法の規制を受けることで社会的信用が担保され、企業外部の関係者にとっては安心して会計による情報を受けることができます。会計においては図表のように規定が設けられており、それに基づいて情報公開(disclosure)されています。
図表:財務会計の法規制

会計公準とは、財務会計が行われるための基本的前提をいいます。会計原則形成の基礎構造を示す枠組みまたは命題として、図表3のようなギルマンの三公準があります。会計公準は、「構造的公準」と「要請的公準」に大きく分けられています。構造的公準は「企業実体の公準」「継続企業の公準」「貨幣的評価の公準」の3つに分かれており、要請的公準は、「有用性の公準」と「公正性の公準」の2つに分かれます。
図表3:ギルマンの三公準
企業実態の公準 | 「企業」を単位とするを前提とする。 →利害関係者から独立して企業に関するものだけ記録・計算する。 |
継続企業の公準 | 半永久的に企業が継続することを前提とする。 →企業の将来の事業活動に関するリスクは「継続企業の前提に関する注記」を行わなければならない。 |
貨幣的評価の公準 | 貨幣額によって行うことを前提とする。 →経営者の手腕など財貨で評価できないものは記録できない。 |
概念フレームワークとは、現行企業会計の基礎のある前提や概念を体系化したものです。概念フレームワークにおける財務報告の目的は、利害関係者一般ではなく「投資家」に限定して、投資家が企業成果の予測や企業価値の評価をする際に役立つような企業の財務状況の開示、具体的には企業の投資のポジション(ストック)とその成果(フロー)を開示する情報公開であり、利害調整機能や説明責任履行機能は副次的なものとされます。将来の基準設定に指針を提供し、また、海外の基準設定主体とのコミュニケーションを円滑にする役割が期待され、図表のような体系になっています。
図表:概念フレームワークの体系
- 財務報告の目的
- 会計情報の質的特性
- 財務諸表の構成要素
- 財務諸表における認識と測定
会計情報の質的特性は、投資家の意思決定に有効な情報を提供する意思決定有用性です。意思決定有用性は、図表のように、下位の意思決定との関連性と信頼性に支えられ、さらに内部整合性と比較可能性がそれらを基礎から支える一般的制約となる特性として位置付けられています。
図表:意思決定有用性の階層構造

財務諸表の構成要素は、貸借対照表では「資産」「負債」「純資産」「株主資本」、損益計算書では「純利益」「収益」「費用」があります。その定義は図表の通りですが、経済的資源から資産と負債が独立に定義され、そこから純資産と包括利益が、従属して定義されていることが、また、純利益が独立して定義されてそこから収益と費用が従属して定義されていることが分かります。
帰納的アプローチ
企業会計原則は、1949年(昭和24年)に、旧大蔵省経済安定本部・企業会計制度対策調査会(現在の金融庁・企業会計審議会)によって作成され、実務的慣習から一般的に公正妥当と認められたところを要約した帰納的アプローチによるもので、法令ではありませんが、監査の基礎となり、法令改廃にあたっても尊重されるものとされるものとして公表されました。
いわば企業会計原則は会計における一般法です。近年では特別法としていわゆる「新会計基準」といわれる多数の会計基準が発表されてきましたが、その「新会計基準」に規定のないものについては企業会計原則を考慮することになります。
企業会計原則は、上位原則として一般原則、下位原則として損益計算原則と貸借対照表原則が規定されています。一般原則はさらに図表のように上位の①真実性の原則、下位の②~⑦の原則があり、下位の原則を満たすことによって上位の真実性の原則が満たされ、また、損益計算原則と貸借対照表原則は下に項を設けて解説します。
図表:一般原則の構成
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
真実性の原則とは、財務状態と経営成績について真実の報告をしなければいけないという原則です。ここでいう真実は、唯一無二の絶対的真実ではなく相対的真実をいい、図表のように例えば減価償却では、取得原価という記録された事実は1つでも、定額法他会計上の慣習で処理方法が複数あり、その選択は個人的判断で行うことから、結果的に減価償却金額は処理方法によって異なりますが、いずれも真実です。
図表:真実性の原則の総合的表現
記録された事実 | 記録される額はすべて記録された過去の取引額を基礎とする。 |
会計上の慣習 | 複数の会計処理を認められていても、いずれも真実なものとして扱う。 |
個人的判断 | 経営者の将来に対する予測という主観的な判断が入り込まざるをえない。 |
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
企業会計原則 一般原則一
正規の簿記の原則とは、適正な会計処理を行い、正確な会計帳簿を作成することで、棚卸法ではなく、誘導法により会計記録から財務諸表を作るという原則です。正確な会計帳簿の要件としては少なくとも図表の網羅性、検証可能性、秩序性の3つを満たす必要があります。
図表:正確な会計帳簿の要件
網羅性 | 記録すべき事実をすべて正しく記録すること。 |
検証可能性 | 記録はすべて客観的に証明可能な証拠書類に基づいていること。 |
秩序性 | すべての記録が一定の法則に従って組織的・体系的に秩序正しく行われていること。 |
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
企業会計原則 一般原則二
資本取引・損益取引区分の原則が求められるのは、図表のように、資本取引が自己資本そのものの増加であるのに対し、損益取引きが自己資本の利用による増減で性格の異なるものであるからです。とりわけ資本取引から生じる資本剰余金と損益取引きから生じる利益剰余金は、財務状態および経営性成績の適正に開示する観点から混同をしてはいけません。
図表:資本取引・損益取引きの区別
資本取引・損益取引区分 | 自己資本そのものの増加と、自己資本の利用による増減とを明確に区別すること。 |
資本剰余金・利益剰余金区分 | 資本取引から生じる資本剰余金と損益取引きから生じる利益剰余金を明確に区別すること。 |
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
企業会計原則 一般原則三
資本剰余金は、資本取引から生じた剰余金であり、利益剰余金は損益取引から生じた剰余金、すなわち利益の留保額であるから、両者が混同されると、企業の財政状態及び経営成績が適正に示されないことになる。従って、例えば、新株発行による株式払込剰余金から新株発行費用を控除することは許されない。
企業会計原則 注解【注2】前段
明瞭性の原則
- 重要な会計方針の開示
- 重要な後発事象の開示
- 区分表示の原則
- 総額表示の原則
- 科目設定にあたっての概観性の考慮
- 重要事項の注記による補足
- 重要科目への附則明細書の作成
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
企業会計原則 一般原則四
継続性の原則とは、複数の会計処理や手続きがある場合に、いったん採用したものを毎月採用するという原則です。みだりに変更すると図表のように利益操作の排除や期間比較性の確保が困難になるためで、変更には外部的要因または内部的要因の正当な理由が必要です。
図表:継続性の原則の必要性
利益操作の排除 | みだりに会計処理や手続きを変更し利益の操作をしたものは真実なものとは認められません。利益を大きくし利害関係者の印象をよくしたり、逆に悪くして納税額を下げるなどが考えられます。 |
期間比較性の確保 | 期間ごとに採用する会計処理や手続きが違えば比較ができず、利害関係者の判断が難しくなります。 |
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
企業会計原則 一般原則五
企業会計上継続性が問題とされるのは、一つの会計事実について二つ以上の会計処理の原則又は手続の選択適用が認められている場合である。
このような場合に、企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。
従って、いったん採用した会計処理の原則又は手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。
なお、正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを当該財務諸表に注記しなければならない。
企業会計原則 注解【注3】
保守主義の原則とは、ある会計処理を行うにあたって、いくつかの判断ができる場合には、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行うという原則です。慎重な判断とは、図表のように利益を少なくするものですが、真実性の原則に反しないよう、実態に即して予測される幅の中で最も保守的なものを採用することが促されます。
図表:保守主義の要請
予想収益 | 計上禁止 |
予想費用 | 総記計上 |
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
企業会計原則 一般原則六
企業会計は、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行わなければならないが、過度に保守的な会計処理を行うことにより、企業の財政状態及び経営成績の真実な報告をゆがめてはならない。
企業会計原則 注解【注4】
単一性の原則とは、実質一元・形式多元とする原則です。財務会計、管理会計、税務会計、と目的ごとに形式を変えることはあっても、元とする会計記録は一つでなければいけません。
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
企業会計原則 一般原則七
重要性の原則とは、重要性の乏しいものは簡便な処理または表示をするという原則です。重要性の判断としては金額の量的重要性と、科目の質的重要性がありますが、計算の経済的な判断から認められているものです。
企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。
企業会計原則 注解【注1】前段
純資産
純資産(英: net worth)は、簿記における勘定科目の区分の一つで、会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額を指しますが、自己資本(英: ownership equity)という経営権を譲渡する出資(元手)や自身の事業の儲け(利益)により資金調達をしたものと捉えることもできて、表1のような分類がされます。
表1:純資産(自己資本)の分類

株主資本
株主資本とは、既に実現している元手または利益のうち、親会社(従属関係のない会社の場合は自社全体)に帰属する純資産で、表1のように他の純資産の分類に当てはまらないものです。株主からの出資(資本金と資本剰余金)と会社がこれまで稼いだ利益の累計額の合計(利益剰余金)から会社が保有する自己株式を差し引いた金額(資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式=株主資本)になります。
表1:株主資本の分類

このうち元手による資金調達では、表2のようにその元手の100%を資本金で処理する原則処理と、会社法が規定する50%以上を資本金、残りを資本準備金で処理する容認処理がありますが、資本金にする額が多いと、減資手続き、納税額、利益準備金額など、何かと手間のかかることが多くなるため、会社法に定める最低限の金額を資本金とする容認処理をとることが一般的ですが、結果的に資本金や資本準備金の元手から資金調達され、資産が増加したことが表されます。
表2:元手による資金調達
原則処理 | (資本金)を(当座預金)等に処理することで、(当座預金)等[資産]と(資本金)[純資産]が増加する。 例)(当座預金)1,000/(資本金)1,000 |
容認処理 | (資本金)および(資本準備金)を(当座預金)等に処理することで、(当座預金)[資産]、(資本金)[純資産]、(資本準備金)[純資産]等が増加する。 例)(当座預金)1,000/(資本金)500 (資本準備金)500 |
さらに、元手によるに資金調達は、株式会社では株式が使われ、創設時の創設発行、設立後の増資があり、株式発行にかかる費用は、創立時の創立費、設立後~営業前の開業費、営業後の株式交付費に分けられます。このうち増資では、①申込期間中に申込者から申込証拠金を預かる、②申込者から選定した株主に株式を割当てるという工程をたどるため、(株式申込証拠金)[負債]という勘定科目を設けて表3のように処理します。
表3:増資の処理
申込証拠金受取 | (株式申込証拠金)を(別段預金)に処理することで、(別段預金)[資産]と(株式申込証拠金)[純資産]が増加する。 例)(別段預金)1,000/(株式申込証拠金)1,000 |
払込期日 | (資本金)および(資本準備金)を(株式申込証拠金)に、(別段預金)を(当座預金)等に処理することで、(資本金)[純資産]、(資本準備金)[純資産]、(当座預金)等[資産]、が増加、(株式申込証拠金)[純資産]、(別段預金)[資産]が減少する。 例)(株式申込証拠金)1,000/(資本金)500 (資本準備金)500 (当座預金)1,000/(別段預金)1,000 |
また利益による資金調達では、表4のように収益または費用の発生毎に資産の増減が起こりますが、発生した収益または費用の各勘定残高は決算時に損益勘定へ振替えて、さらにその貸借差額である当期純損益を繰越利益剰余金勘定に振替えることで、結果的に繰越利益剰余金の利益から資金調達され、資産が増加したことが表されます。
表4:利益による資金調達
損益発生 | (商品)等および(商品売買益)等を(当座預金)等に処理することで、(当座預金)[資産]と(商品売却益)[収益]等が増加、(商品)[資産]等が減少する。 例)(当座預金)2,000/(商品)1,000 (商品売却益)1,000 |
帳簿の締め切り | 収益は(損益)を(商品売却益)等収益勘定に処理することで、収益勘定が減少、(損益)が増加し、費用は(商品売却損)等費用勘定を(損益)に処理することによって、費用勘定が減少、(損益)[決算総合勘定]が減少する。 例)(商品売却益)1,000/(損益)1,000 |
損益勘定の振替 | 損益勘定合計残高がプラスなら(繰越利益剰余金)を(損益)に処理することで、(損益)[決算総合勘定]が減少、(繰越利益剰余金)[純利益]が増加し、損益勘定合計残高がマイナスなら(損益)を(繰越利益剰余金)に処理することで、(損益)[決算総合勘定]が増加、(繰越利益剰余金)[純利益]が減少する。 例)(損益)1,000/(繰越利益剰余金)1,000 |
繰越利益剰余金がプラス(貸方残高)の場合は株主に株主総会において配当することができます。表5のように繰越利益剰余金から配当しますが、無制限にできる訳ではなく、会社財産と債権者を保全の観点から会社法によって利益剰余金を、「資本金の1/4と法定準備金との差」と「株主配当金の1/10」のいずれか小さい方の金額だけ積立てないとなりません(※法定準備金は資本準備金と利益準備金の合計です、4(シ)本金の4分の1、配10(トウ)金の10分の1とすれば覚えやすいかも)。
表5:繰越利益剰余金の処分
利益準備金の決定 | (未払配当金)(利益準備金)(任意積立金)を(繰越利益剰余金)に処理することで、(繰越利益剰余金)[純利益]が減少し、(未払配当金)[負債]、(利益準備金)[純利益]、(任意積立金)[純利益]が増加する。 例)(繰越利益剰余金)1,300/(未払配当金)1,000 (利益準備金)100 (任意積立金)200 |
配当の支払い | (当座預金)を(未払配当金)に処理することで、(未払配当金)[負債]と(当座預金)[資産]が減少する。 例)(未払配当金)1,000/(当座預金)1,000 |
繰越利益剰余金がマイナス(借方残高)の場合は補填が認められています。表6のように利益準備金や任意積立金などを株主総会において取り崩します。
表6:繰越利益剰余金の補填
(繰越利益剰余金)を(任意積立金)等に処理し、(任意積立金)等が減少、(繰越利益剰余金)が増加する。 例)(任意積立金)10/(繰越利益剰余金)10 |
引当金
引当金とは、将来の支出に備えて準備する負債のうち、表1の4つの事項に当てはまるものです。将来発生の支出に対して行うものですので、当期発生の支出に対しては引当金の計上はしません。表2のように評価性引当金と負債性引当金に区別、表3のように決算時毎に差額補充法または洗替法によって処理しますが、会計上で大きな収益・費用の変動を防いだり、税務上で損金算入できるケースがあったりするなどのメリットがあります。
表1:引当金認定要件
- 将来の特定の費用または損失の場合
- 発生が当期以前の事象に起因する場合
- 発生の可能性が高い場合
- 金額を合理的に見積もることができる場合
表2:引当金の種類
評価性引当金 | 将来の損失に備えるために計上する引当金 例)貸倒引当金、投資損失引当金 |
負債性引当金 | 将来の費用に備えるために計上する引当金 例)賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金 |
表3:引当金の処理
差額補充法 | 前期の貸倒引当金と当期に発生した貸倒引当金の差額を計上する仕訳方法 例)(貸倒引当金繰入)40/(貸倒引当金)40 |
洗替法 | 前期の貸倒引当金の全額を取崩して新たに見積もった金額を計上する仕訳方法 例)(貸倒引当金)60/(貸倒引当金戻入)60 (貸倒引当金繰入)100/(貸倒引当金)100 |
貸倒引当金
貸倒引当金は、売掛金などの債権について回収できない貸倒れが生じると予定される場合に備える評価性引当金の一つで、一般の債権については一括評価、回収可能性が低い債権は個別評価して金額を表1のように見積もり、表2のように処理します。
表1:貸倒引当金の設定額
貸倒引当金設定額
=(債権期末残高ー担保処分見込額)×貸倒設定率
表2:貸倒引当金の処理方法
決算時 | 貸倒引当金設定額で(貸倒引当金)を(貸倒引当金繰入)に処理する。 例)(貸倒引当金繰入)80/(貸倒引当金)80 |
貸倒時 | 債権残高で(売掛金)等を準備金額で(貸倒引当金)に処理し、差額を(貸倒損失)で計上する。ただし、当期発生分に関しては全額(貸倒損失)で計上する。 例)(貸倒引当金繰入)80 (貸倒損失)20/(貸倒引当金)100 |
退職給付引当金
退職給付引当金は、将来予定の従業員の退職金の支払いに備える負債性引当金の一つで、表1のように処理します。
決算時 | 当期分退職金額で(退職給付引当金)を(退職給付費用)に処理する。 例)(退職給付費用)80/(退職給付引当金)80 |
支給時 | 退職金全額で(現金)等を(退職給付引当金)に処理する。 例)(退職給付引当金)100/(現金)100 |
賞与引当金
賞与引当金は、将来予定の従業員の賞与の支払いに備える負債性引当金の一つで、表1のように処理します。
決算時 | 当期分賞与金額で(賞与引当金)を(賞与引当金繰入)に処理する。 例)(賞与引当金繰入)80/(賞与引当金)80 |
支給時 | 賞与全額で(当座預金)等を準備金額で(賞与引当金)に処理し、差額を(賞与)で計上する。 例)(賞与引当金繰入)80 (賞与)20/(当座預金)100 |
修繕引当金
修繕引当金は、機械などの固定資産について毎年行われる修繕が次期にずれ込むことが予定される場合に備える負債性引当金の一つで、表1のように処理します。
表1:修繕引当金の処理方法
決算時 | 修繕引当金設定額で(修繕引当金)を(修繕引当金繰入)に処理する。 例)(修繕引当金繰入)80/(修繕引当金)80 |
支払時 | 修繕費全額で(当座預金)等を準備金額で(修繕引当金)に処理し、差額を(修繕費)で計上する。ただし、当期発生分に関しては全額(修繕費)で計上する。 例)(修繕引当金繰入)80 (修繕費)20/(当座預金)100 |
税理士試験_財務諸表論