事業金融

【事業】正しくお金を管理するスキルを身に着ける/ステップ1:ファイナンシャルプラン

事業
固定消費固定投資変動消費変動投資
ステップ1
ファイナンシャルプランニング
税金保険貯蓄/運用生活/遊行事業教育
ステップ2
戦略選定
税金/保険貯蓄/運用生活/遊行事業/教育
ステップ3
商品選定
税金/保険貯蓄/運用生活/遊行事業/教育
ステップ4
購入方法選定
税金/保険貯蓄運用生活遊行事業/教育

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事業における簿記について取り扱います。

〈工程別〉記帳の方法

財務諸表への編集

親会社(P;Parent campany)と子会社(S;Subsidiary company)がある場合の会計制度である連結会計の処理は、主従関係のある二つ以上の企業からなる企業集団の経営成績や財務状態を総合的に報告する連結財務諸表を親会社は作成する必要があるため、親会社と子会社の個別財務諸表をもとに親会社と子会社の取引額等を調整する連結修正仕訳をして作成します。

連結財務諸表には、①連結損益計算書②連結貸借対照表③連結株主資本等変動計算書がありますが、個別財務諸表との特徴的な違いは、①連結損益計算書は売上原価の内訳の非表示と非支配株主に帰属する当時純損益の表示、②連結貸借対照表は資本剰余金と利益剰余金の内訳の非表示と被支配株主持分の表示があげられます。

支配獲得経過日別の連結

経過日ごとの仕訳けについてみていきます。経過日は子会社株式取得支配獲得日支配獲得1年目支配獲得2年目以降と分け、作成する連結財務諸表や連結修正再仕訳の処理の違いを確認してください。

子会社株式関連会社株式の買付時は、表1のように決算時は支配目的で長期的に保有するものなので評価替えは必要なく、また買い付けは結果一般的な処理で構いませんが、現金等で企業ブランドを買い、そのブランドを株式という形で保有する、こののれんというブランド価値を経由する思考があると後に解説する連結会計の理解がスムーズです。

表1:子会社株式・関連会社株式の個別財務諸表上での処理

支配獲得日

ある企業が他の企業に対する支配を獲得した支配獲得日には、①親会社と子会社の貸借対照表を合算する、②投資と資本の相殺削除をする(資本連結)、③連結貸借対照表を作る、と手順を進めます。

このうち②資本連結とは、親会社が子会社の株式を取得した際の会社ごとの仕訳は、連結グループで見ると単にお金が移動しただけと捉え、この取引がなかったことにものとする逆仕訳の連結修正仕訳をすることです。

このとき、部分所有の場合はその非所有割合分は非支配株主持分勘定[純資産]に振替えます。非支配株主持分は、連結子会社の資本のうち、支配会社である連結財務諸表作成会社(親会社)の持分に属しない部分のことで、例えば60%の部分所有の場合、子会社貸借対照表純資産部門の各項目の60%は親会社に帰属する持分、残りの40%が親会社でない株主に帰属する持分であるとして、②資本連結のときには親会社持分と被支配株主持分それぞれで修正仕訳する必要があります。

また、連結修正仕訳の際に投資消去差額が発生する場合はのれん勘定[資産]で処理します。のれんは買収された企業のブランド価値であり、連結会計を進めたときにのれん残高がプラスで残るようだと、子会社には株式以上の価値があったということになります。

<①親会社と子会社の貸借対照表を合算する>

<②資本連結>

<③連結貸借対照表を作る>

支配獲得後1~2年目の連結

支配獲得日後は連結損益計算書、連結貸借対照表、連結株主資本等変動書を作成します。

前期までに行った連結修正仕訳を開始仕訳とし、その後に当期の連結修正仕訳を行い、当期の連結財務諸表を作成しますが、このうち当期の連結修正仕訳では、①のれんの償却、②子会社の当期純損益の振替え、③子会社の配当金の修正、などがあります。

<1年目の開始仕訳>

前期末連結修正仕訳:
資本金)3,000・(利益剰余金)1,000・(のれん)200/(S社株式)2,600・(非支配株主持分)1,600
⇒(資本金当期首残高)3,000・(利益剰余金当期首残高)1,000・(のれん)200/(S社株式)2,600・(非支配株主持分当期首残高)1,600

<1年目の当期の連結修正仕訳>

のれん:
(のれん償却)20/(のれん)20

子会社当期純損益:
非支配株主に帰属する当期純損益)400×40%/(非支配株主持分当期変動額)400×40%
=(非支配株主に帰属する当期純損益)160/(非支配株主持分当期変動額)160

子会社配当金修正:
(受取配当金)180・(非支配株主持分当期変動額)300×40%/(剰余金の配当)300
=(受取配当金)180・(非支配株主持分当期変動額)120/(剰余金の配当)300

2年目の連結において、その前期末までに行った連結修正仕訳を再度行います。

<2年目の連結と開始仕訳>

消去と修正

親会社と子会社の間、もしくは子会社の間の損益取引や債権債務残高を消去する連結修正仕訳を行うことによって、連結財務諸表にグループ外部に対する損益や債権債務だけを計上しますが、相殺消去する勘定科目は表1のようなものがあり、また付随する貸倒引当金と貸倒引当金繰入についても親会社・子会社ともに相殺消去します。

表1:連結会計において相殺消去する勘定科目

内部取引高の相殺消去債権債務の相殺消去
売上高と売上原価買掛金と売掛金
受取利息と支払利息支払手形と受取手形
受取配当金と配当金借入金と貸付金
未払費用と未収収益
前受収益と前払費用

ダウンストリーム

アップストリーム

内部取引の相殺消去

連結財務諸表にグループ外部に対する損益や債権債務だけを計上するために、グループ内部に対する損益や債権債務については連結修正仕訳によってその取引きがなかったことにします。

内部取引高親会社が子会社に商品を販売していたとき、グループ内取引にも関わらずグループ内の(売上高)と(売上原価)が増加しているので、連結修正仕訳では(売上原価)を(売上高)に処理し、(売上原価)と(売上高)を減少させることでこの取引きをなかったことにする。
例)(売上高)1,000/(売上原価)1,000
債権債務親会社が子会社に貸付けしていたとき、グループ内取引にも関わらずグループ内の(短期貸付金)と(短期借入金)が増加して、また付随して(支払利息)と(受取利息)が増加しているので、連結修正仕訳では(短期貸付金)と(支払利息)を(短期借入金)と(受取利息)に処理し、(短期貸付金)と(短期借入金)および(支払利息)と(受取利息)を減少させることでこの取引きをなかったことにする。
例)(短期借入金)200/(短期貸付金)200
       (受取利息)20/(支払利息)20

貸倒引当金の調整

債権債務の相殺消去を行った際、債権保有側が貸倒引当金を計上していた場合、債権が消去されても貸倒引当金だけが残ってしまいますので、その貸倒引当金を取り消す仕訳を行う必要があります。

親会社→子会社親会社が子会社に売掛金とその貸倒引当金を計上していたとき、グループ内取引にも関わらずグループ内の(売掛金)と(買掛金)が増加して、また(貸倒引当金)と(貸倒引当金繰入)が増加しているので、連結修正仕訳では(売掛金)と(貸倒引当金)を(買掛金)と(貸倒引当金)に処理し、(売掛金)と(貸倒引当金)および(買掛金)と(貸倒引当金)を減少させることでこの取引きをなかったことにする。
例)(買掛金)1,000/(売掛金)1,000
    (貸倒引当金)50/(貸倒引当金繰入)50
子会社→親会社子会社が親会社に売掛金とその貸倒引当金を計上していたとき、上記と同様の連結修正仕訳を、さらにその(貸倒引当金繰入)金額のうち非支配株主に帰属する部分の連結修正仕訳を行います。
例)(買掛金)1,000/(売掛金)1,000
    (貸倒引当金)50/(貸倒引当金繰入)50
(非支配株主に帰属する当期純利益)20/(非支配株主持分当期変動額)20

未実現利益の消去

親会社と子会社の商品や土地などの非償却性資産の取引については、ほかの得意先に対するものと同様に取得原価に一定の利益を加算して売却し、個別会計上は親会社と子会社は別会社として財務諸表を作成するので期末商品卸高が計上されますが、連結会計上は親会社と子会社は同一グループとして財務諸表を作成するため、期末残高に含まれる利益である未実現利益を消去しなければなりません。

親会社が子会社に商品を販売するダウンストリームの場合、グループ内取引にも関わらずグループ内の(商品)と(売上原価)が利益の分だけ増加しているので、連結修正仕訳では(売上原価)を(商品)に処理し、(売上原価)と(商品)を減少させることでこの取引きをなかったことにする。翌期に外部にその商品が販売された際には、実現利益になったので開始仕訳として逆仕訳を行います。

子会社が親会社に商品を販売するアップストリームの場合、上記と同様の連結修正仕訳を行いますが、子会社の利益が減ることになるので、親会社に帰属する当期純利益も、非支配株主に帰属する当期純利益も減ってしまいます。親会社はグループ内なので利益が発生しない減らした状態が当然ですが、非支配株主はグループ外なので、減らした分は増やしてもらわないと困ります。そこで(売上原価)金額のうち非支配株主に帰属する部分の金額は非支配株主に帰属する当期純利益を増やす連結修正仕訳も行います。

ダウンストリーム(売上原価)100/(商品)100
アップストリーム(売上原価)100/(商品)100
(非支配株主持分当期変動額)40/(非支配株主に帰属する当期純利益)40

仕訳帳への仕訳

売買の処理

商品売買記帳処理方法には、表1のうち三分法売上原価対立法、が使われることが多いです。商品を仕入れたときは(仕入)、売り上げたときは(売上)、決算時は期首商品棚卸高で(繰越商品)から(仕入)、期末商品棚卸高で(仕入)から(繰越商品)にと、3つの勘定で処理する三分法は、原価や単価が分かりづらいものに向いており、商品を仕入れたときは(仕入)、売り上げたときは(売上)を計上するとともに、その商品の原価で(商品)を(売上原価)に振替えることで決算時の処理は必要ない売上原価対立法は、原価や単価が分かりやすいものに使われる傾向があります。

表1:売買記帳処理方法

原価計算

原価とは、商品や製品を販売するまでの費用のことをいいます。一般的には仕入にかかった商品原価、製造にかかった製品原価のみを指しますが、販売費や一般管理費を含めた総原価という考え方もあり、その総原価を計算する原価計算の方法には図表のようなものがあります。

図表:原価計算の方法

  • 業種による分類
    • 個別原価計算:単純/部門別
      受注生産を行う場合に使用します。
    • 総合原価計算:単純/等級/組別/工程別
      大量生産を行う場合に使用します。
  • 予算管理による分類
    • 実際原価計算…実際原価による計算方法
    • 標準原価計算…標準原価による計算方法
  • 固定費の扱いによる分類
    • 全部原価計算…全部の費用を原価とする計算方法
      固定費と変動費のすべての費用を製造原価とします。
    • 部分原価計算…一部の費用を原価とする計算方法
      直接費である変動費のみを製造原価とすることから直接原価計算ともいわれます。

三分法では決算時に売上原価当期商品売買益を算出します。表2のように、売上原価は、期首棚卸高と当期商品仕入高から期末商品卸高を引き、その売上原価を当期売上から引けば当期商品売買益が求められます。

表2:売上原価と当期商品売買益の算定

  • 期首商品棚卸高+当期商品仕入高=期末商品棚卸高+売上原価
    ⇒期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価
  • 当期売上=売上原価+当期商品売買益
    ⇒当期売上-売上原価=当期商品売買益

売価還元原価率は、「受入原価合計÷受入売価合計」という計算で求めます。原価法は受入売価合計の計算において値下額と値下取消額を考慮するのに対して、低価法は受入売価合計の計算において値下額と値下取消額を考慮しません。

〈勘定別〉記帳の方法

事業の分類は、大きく商業工業に分けられます。それぞれに適した商業簿記、工業簿記といった記帳処理方法があり、商業は商品を仕入れて、加工をせずにそのまま販売するのに対して、工業は材料を仕入れて、製品に加工をして販売する工程がありますので、図表のように商業簿記と工業簿記には違いが出ます。

図表:商業簿記と工業簿記の比較

商業簿記工業簿記
財務諸表
表示勘定科目
【貸借対照表】
商品
【損益計算書】
期首商品棚卸高
期末商品棚卸高
当期商品仕入高
【貸借対照表】
製品・材料
【損益計算書】
期首製品棚卸高
期末製品棚卸高
当期製品製造原価
原価計算期間1年1月

商業簿記

商品

商品有高帳をつけている場合には、払出単価からも売上原価を算出できます。商品有高帳は、商品の仕入れ(受け入れ)、売り上げ(払い出し)、残高を記載した帳簿で、その記載は仕入原価で行いますが、同じ商品でも仕入れた時期や場所が違えば単価が変わることがあるため、払出単価という、どの仕入単価で払い出すのかを表3のような方法から選択し、払出単価に払出数量を乗じたものの合計が売上原価になります。

表3:払出単価の決定

  • 先入先出法・・・先に仕入れたものから先に売り上げる。
  • 平均法
    • 移動平均法・・・仕入れた都度で平均単価を求める。
    • 総平均法・・・一定期間における平均単価を求める。

決算のときに商品の実際の数量を数えることを棚卸といいます。棚卸によって把握される商品の数量は実地棚卸数量といいますが、商品有高帳の帳簿棚卸数量より少ないことがあり、この残量の違いは紛失や盗難の棚卸減耗としてその価格差を棚卸減耗損勘定、また決算時の時価簿価より低かったりすることがあり、この価格の違いは売れない間の時間の経過によって商品価値が変化したとして商品評価損勘定で、表4のように処理します。

表4:棚卸減耗損と商品評価損の計上

棚卸減耗損商品減耗損額で(繰越商品)を(棚卸減耗損)に処理することで、(棚卸減耗損)[費用]を増加、(繰越商品)[資産]を減少させる。
例)(棚卸減耗損)20/(繰越商品)20
商品評価損商品評価損額で(繰越商品)を(商品評価損)に処理することで、(商品評価損)[費用]を増加、(繰越商品)[資産]を減少させる。
例)(商品評価損)8/(繰越商品)8

商品評価損は、原則として損益計算書の売上原価の区分に表示します。しかし、販売費及び一般管理費の区分に表示することは一切認められません。なお、例外として、評価損が臨時的原因により生じ、かつ多額であれば特別損失の区分に表示します。計算の問題では、評価損が「臨時かつ多額である」旨が明示されていない場合は、売上原価の区分に計上します。

役務

ところで役務(サービス)については、表5のようにこれまで見てきた一般にである商品とは異なる仕訳けをします。後払いの多い商品と比べサービスは前払いのことが多いので、その時には前受金勘定[負債]、前払金勘定[資産]、サービスの提供に必要な費用は仕掛品勘定[資産]を用い、サービスの提供割合に応じてそれぞれ役務収益勘定[収益]、役務費用勘定[費用]、役務原価勘定[費用]に振替ます。

表5:サービスの処理

売上仕入
代金の前受時
費用の支払時
(現金)300/(前受金)300
(仕掛品)100/(現金)100
(前払金)300/(現金)300
決算時(前受金)180/(役務収益)180
(役務原価)60/(仕掛品)60
(役務費用)180/(前払金)180
全サービス終了時(前受金)120/(役務収益)120
(役務原価)40/(仕掛品)40
(役務費用)120/(前払金)120

サービスの提供割合に応じて収益・費用計上するのは「収益認識に関する会計基準」に規定されています。表6のように収益は契約した財または役務を顧客に移転することによって履行義務を充足したとき(または充足するにつれて)に認識され、例えば①契約を結びました、②その契約は「A:商品の販売」と「B:保守サービスの提供」で、③契約の取引金額は100円、④Aについては80円、Bについては20円で、⑤Aは商品の引き渡し時に、Bは期間の経過に応じて認識する、という工程をとります。

表6:収益認識の5つの工程

  1. 顧客との契約の識別
  2. 契約における履行義務の識別
  3. 取引価格の算定したのち
  4. 取引価格の履行義務配分
  5. 履行義務を果たしたときに収益の認識

契約資産の仕訳け

契約資産は契約を締結したもののまだ受取っていない部分の金額をいい、勘定科目は(契約資産)[資産]を使って表1のように、また商品Aの代金は商品Bの引渡時に受取る場合は表2のように処理します。

表1:契約資産の仕訳け

商品受取時現金)等を、契約既履行金額で(仕入)、契約未履行金額で(契約資産)に処理します。
例)(仕入)80
  (契約資産)20/(現金)100
決算時①契約既履行金額で(契約資産)を(仕入)に処理します。
例)(仕入)10/(契約資産)10
決算時②契約既履行金額で(契約資産)を(仕入)に処理します。
例)(仕入)10/(契約資産)10

表2:代金請求権のない場合の仕訳け

商品Aの引渡時商品Aの金額で(売上)を(契約資産)に処理します。
例)(契約資産)80/(売上)80
商品Bの引渡時商品Aの金額で(契約資産)、商品Bの金額で(売上)を(売掛金)等に処理します。
例)(売掛金)100/(契約資産)80
            (売上)20
決済時契約既履行金額で(売掛金)を(当座預金)等に処理します。
例)(当座預金)100/(売掛金)100

契約負債の仕訳け

契約負債は契約を締結したもののまだ引渡していないの部分の金額をいい、勘定科目は(契約負債)[負債]を使って表1のように、割戻し(rebate)が予想される場合には勘定科目は(返金負債)[負債]を使って表2のように処理します。

表1:契約負債の仕訳け

商品引渡時契約既履行金額で(売上)、契約未履行金額で(契約負債)を(現金)等に処理します。
例)(現金)100/(売上)80
         (契約負債)20
決算時①契約既履行金額で(売上)を(契約負債)に処理します。
例)(契約負債)10/(売上)10
決算時②契約既履行金額で(売上)を(契約負債)に処理します。
例)(契約負債)10/(売上)10

割戻予想金額で(返金負債)を計上します。

表50:割戻しの処理

仕入売上
商品引渡時(仕入)100/(買掛金)100(現金)100/(売上)80
       (返金負債)20
割戻適用時(買掛金)20/(仕入)20(返金負債)20/(現金)20
※割戻不適用時仕訳なし(返金負債)20/(売上)20
貸借対照表上(仕入)80/(買掛金)80(現金)80/(売上)80

代金の前渡しと費用の支払い

代金の前渡しは(契約負債)、後渡しは(契約資産)という勘定科目を使用し、役務の場合はそれぞれ(前受金)(仕掛品)とすることもある。

(現金)300/(前受金)300

(仕掛品)100/(現金)100

一部契約が履行されていないときの仕訳

履行された契約については(売上)で、履行されていない契約については前渡しなら(契約負債)、後渡しなら(契約資産)で計上します。

(現金)300/(契約負債)200・(売上)100

工業簿記

工業簿記とは、材料を仕入れて、製品に加工をして販売する工業における簿記のことです。図表のように、工業簿記における財務諸表は、貸借対照表損益計算書は商業簿記にも共通していますが、加えて上場企業は製造原価報告書を作成しなければいけないことが特徴です。

図表:工業簿記の勘定連絡図

工業簿記における貸借対照表は、材料費仕掛品製品の期末有高が表示されます。図表のように表示名はそれぞれ材料、仕掛品、製品で、その金額は期末の棚卸によって求められます。また、材料はまだ加工されていないもの、仕掛品は加工途中のもの、製品は加工が終了して販売できるものです。

工業簿記における損益計算書では、製品の売上原価が計算されます。図表のように期首有高、当期完成高、期末有高がそれぞれ、①期首製品棚卸高、②当期製品製造原価、③期末製品棚卸高と表示され、①期首製品棚卸高と②当期製品製造原価の合計額から③期末製品棚卸高を差し引くことで売上原価が求められます。また、製造間接費配賦差異は売上原価に加算または減算します。

  • 期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高±製造間接費配賦差異=売上原価

製造原価報告書では、製品の製造原価が計算されます。図表のように、形態別に材料費労務費経費が発生し、さらにそれぞれを製品との関連によって製造直接費製造直接費に分けます(直接材料費以外の費用を合わせて加工費ともいいます)。

図表:製造原価の分類

製造原価報告書には、A:材料費、労務費、経費に分類して記入する形式と、B:直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費に分類して記入する形式があります。図表のように、期首有高、期末有高、当期完成高がそれぞれ、①期首仕掛品棚卸高、②期末仕掛品棚卸高、③当期製品製造原価と表示され、AとBどちらの形式でも、当期消費量の合計が当期総製造費用となり、期首仕掛品棚卸高との合計から期末仕掛品棚卸高を差し引いたものが当期製品製造原価と求められます。なお、内訳を表示させる形式を採る場合は、Aの形式のおける材料費、Bの形式における直接材料費は、計算の過程が、Aの形式における加工費、Bの形式における直接加工費と製造間接費は計算の結果が項目ごとに記載されます。

  • 期首仕掛品棚卸高+当期総製造費用-期末仕掛品棚卸高=当期製品製造原価

Aの形式のおける材料費は、期首有高、期首購入高、期末有高、当期消費高がそれぞれ、期首材料棚卸高当期材料仕入高期末材料棚卸高当期材料費と表示され、期首材料棚卸高当期材料仕入高の合計金額から期末材料棚卸高を差引いたものが当期材料費と求められ、Bの形式における直接材料費もこれに準じます。労務費は、期首支払高と当期未払高合計金額から前期未払高を差引いたものが当期消費高と求められます。経費や製造間接費は、当期の支払高がそのまま当期の消費高となることが多いです。

  • 期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高=当期材料費
  • 期首支払高+当期未払高-前期未払高=当期消費高

工業簿記は、①費用別計算、②製造間接費の配賦、③製造原価の計算というステップを踏んでいきます。図表のように、①費用別計算では、製造直接費は使用料、消費量が明確なので仕掛品に振替え、製造間接費は明確ではないので製造間接費勘定に振替えます。②製造間接費の配賦では、製造間接費を任意のルールを設定し、その通りに配賦していきます。③製造原価の計算では、完成品分について仕掛品から製品に振替えます。

図表:工業簿記の基本的な流れ

製造費の処理は、用いる勘定科目の設定によって変わります。その設定には図表のように、①製造費勘定を用いる場合②製造費諸勘定を用いる場合③製造費諸勘定を用いない場合が(、④材料費に関しては(材料仕入)費用勘定を用いる場合も)あります。

図表:製造費の処理

購入時は、材料の購入代価に付随費用(材料副費)を加えた購入原価で計上します。材料副費には材料を倉庫に入荷するまでに発生した外部材料副費と、倉庫に入荷してから出荷するまでに発生した内部材料副費がありますが、任意の予定配賦率を使って計上する材料副費の予定計算が認められています。その処理は図表のように、支払いが発生した場合は(現金)等勘定、発生していない場合は(材料副費)費用勘定で計上します。

図表:材料副費の処理

総記法における消費時や三分法における決算時は、(材料)資産勘定または(材料仕入)費用勘定を材料費=消費単価×消費数量で計上し、直接材料分は(仕掛品)資産勘定に、間接材料分は(製造間接費)に処理します。消費単価は、材料の購入先や購入時期の違いから購入単価が異なることもあるので、実際消費単価を用いる方法と予定消費単価を用いる方法があります。実際消費単価を用いる方法、図表のように、商品の払出単価と同じように先入先出法(テマ…)または平均原価法(ケイサンキライ…)があります。

図表:実際消費単価の決定

  • 先入先出法・・・先に仕入れたものから先に売り上げる。
  • 平均原価法
    • 移動平均法・・・仕入れた都度で平均単価を求める。
    • 総平均法・・・一定期間における平均単価を求める。

材料費の計算に予定消費単価を用いる方法では、これで計算された予定消費額実際消費額との差額を(材料消費価格差異)勘定で月末に調整、年度末に売上原価に振替えます。図表のように、予定よりも実際の方が材料費がかかった不利差異の場合は、材料資産が減少、売上原価費用が増加します。予定よりも実際の方が材料費がかからなかった有利差異の場合は、材料資産が増加、売上原価費用が減少します。また、消費数量の計算には、材料の購入時と消費時に材料元帳へ記入して計算する継続記録法(テマ…)と、購入時のみに材料元帳へ記録して月末に棚卸数量から消費量を計算する棚卸計算法(イロイロワカラナイ…)があります。

図表:予定消費単価を用いた場合の処理

棚卸減耗は、帳簿上の在庫数量(帳簿棚卸数量)より実地の在庫数量(実地棚卸数量)が少ない状態のことをいいます。図表のように商品と同じ考え方なのですが、盗難や火災などの通常生じる程度でない大量になくなる場合は非原価項目として(損益)勘定に処理します。

図表:棚卸減耗

労務費の計算期間は、給与計算期間原価計算期間があります。給与計算期間は月初~月末とは限らず、原価計算期間とずれが生じることもあるため、その場合は重複していない期間は未払賃金勘定にて計上し、月初に再振替仕訳を行います。

労務費の計算に予定消費単価を用いる方法では、これで計算された予定消費額実際消費額との差額を(賃率差異)勘定で月末に調整、年度末に売上原価に振替えます。図表のように、予定よりも実際の方が労務費がかかった不利差異の場合は、労務費が増加、売上原価費用が増加します。予定よりも実際の方が労務費がかからなかった有利差異の場合は、労務費が減少、売上原価費用が減少します。

原価とは、商品や製品を販売するまでの費用のことをいいます。一般的には仕入にかかった商品原価、製造にかかった製品原価のみを指しますが、販売費や一般管理費を含めた総原価という考え方もあり、その総原価を計算する原価計算の方法には図表のようなものがあります。

図表:原価計算の方法

  • 業種による分類
    • 個別原価計算:単純/部門別
      受注生産を行う場合に使用します。
    • 総合原価計算:単純/等級/組別/工程別
      大量生産を行う場合に使用します。
  • 予算管理による分類
    • 実際原価計算…実際原価による計算方法
    • 標準原価計算…標準原価による計算方法
  • 固定費の扱いによる分類
    • 全部原価計算…全部の費用を原価とする計算方法
      固定費と変動費のすべての費用を製造原価とします。
    • 部分原価計算…一部の費用を原価とする計算方法
      直接費である変動費のみを製造原価とすることから直接原価計算ともいわれます。

実際単純個別原価計算は、注文の内容を記載した製造指図書別に、原価計算表という表に集計し、製造原価を計算します。図表のように、製造直接費は製造指図書の金額をそのまま記載(賦課または直課)するだけですが、製造間接費はなんらかの基準(配賦基準)、例えば作業時間などをもとに仕掛品へ振り分け(配賦し)ます。そして、完成品に関しては売上原価勘定に振替えます。

配賦基準には実際配賦予定配賦があります。実際配賦は、実際発生額から配賦基準の合計を除した実際配賦率を求め、これに各製品の実際配賦基準を乗じて配賦額を計算します。予定配賦は、予算額から基準操業度を除した予定配賦率を求め、これに各製品の実際配賦基準を乗じて配賦額を計算します。

  • 実際配賦額=実際発生額÷配賦基準の合計×各製品の実際配賦基準
  • 予定配賦額=予算額÷基準操業度×各製品の実際配賦基準

製造間接費の計算に予定配賦を用いる方法では、これで計算された予定配賦額実際配賦額との差額を(製造間接費配賦差異)勘定で月末に調整、年度末に売上原価に振替えます。図表のように、予定よりも実際の方が製造間接費がかかった不利差異の場合は、製造間接費が増加、売上原価費用が増加します。予定よりも実際の方が製造間接費がかからなかった有利差異の場合は、製造間接費が減少、売上原価費用が減少します。

実際部門別個別原価計算は、複数の部門がある場合の原価計算です。部門には、切削部門、組立部門、塗装部門などの製造にかかわる製造部門と、製造部門、運搬部門、工場事務部門などの製造をサポートする補助部門があります。製造直接費は製造指図書の金額を賦課(または直課)します。

製造間接費はまず①部門個別費と部門共通費の集計、特定の部門で固有に発生した部門個別費はその部門に賦課(直課)、複数の部門に共通して発生する部門共通費は適切な配賦基準、たとえば減価償却費なら専有面積、電力量なら電気消費量などによって各部門に配賦します。

②補助部門費の製造部門への配賦、は補助部門に配賦された製造間接費は適切な配賦基準、たとえば修繕部門なら修繕回数、工場事務部門なら従業員数などによって製造部門へ配賦します。その方法には、補助部門同士のサービスのやり取りがないなら直接配賦法と、ある場合はまずは自部門以外の部門に配賦(一次配賦)して、それから製造部門のみに配賦(二次配賦)する相互配賦法があります。

③製造部門費の各製造指図書への配賦、製造部門に集計された製造部門費はなんらかの基準(配賦基準)、例えば作業時間などをもとに仕掛品へ振り分け(配賦し)ます。そして、完成品に関しては売上原価勘定に振替えます。

配賦基準には実際配賦予定配賦があります。実際配賦は、実際発生額から配賦基準の合計を除した各製造部門ごとの実際配賦率を求め、これに各製品の実際配賦基準を乗じて配賦額を計算します。予定配賦は、予算額から基準操業度を除した各製造部門ごとの予定配賦率を求め、これに各製品の実際配賦基準を乗じて配賦額を計算します。製品ごとに配賦された製造部門費を合計したものがその製品の配賦額となります。

  • 実際配賦額=実際発生額÷配賦基準の合計×各製品の実際配賦基準
  • 予定配賦額=予算額÷基準操業度×各製品の実際配賦基準

製造部門費の計算に予定配賦を用いる方法では、これで計算された予定配賦額実際配賦額との差額を(製造部門費配賦差異)勘定で月末に調整、年度末に売上原価に振替えます。図表のように、予定よりも実際の方が製造部門費がかかった不利差異の場合は、製造部門費が増加、売上原価費用が増加します。予定よりも実際の方が製造部門費がかからなかった有利差異の場合は、製造部門費が減少、売上原価費用が減少します。

実際単純総合原価計算は、同じ製品を大量生産する場合に使われる計算です。

月末仕掛品がない場合は、当月の製造原価を直接材料費と加工費に分けて計算します。直接材料は加工の進捗(加工進捗度)によってその費用が変わることはないとし、直接材料費は完成品と月末仕掛品の数量に応じて配分、先に月末仕掛品を計算し、残りを完成品にします。加工費は加工進捗度に応じて費用が変わるので、仕掛品の数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量に加工費を配分し、残りの加工費を完成品にします。最後に直接材料費と加工費を合計して完成品原価と仕掛品原価を計算します。さらに、完成した製品の原価(完成品原価)を完成品数量で除したものを完成品単位原価といいます。この計算は通常、総合原価計算表を作成して行われます。

  • 完成品換算量=仕掛品数量×加工進捗度
  • 完成品単位原価=完成品原価÷完成品数量

月初仕掛品がある場合は、月初仕掛品と当月製造費用の合計を完成品と月末仕掛品に配分します。完成品原価と月末仕掛品原価の計算方法には先入先出法平均法があります。

実際工程別原価計算は、第一段階で材料を切り、第二段階で組み立てるなど、いくつかの作業区分(工程)を設けてある場合の原価計算です。工程別総合原価計算は工程ごとに製品の原価を計算、まずは第一工程完了品原価、第二工程原価は、第一工程完成原価を前工程費として投入する累加法が使われます。

実際組別原価計算は、製品の種類をといい、原価を各組に個別に発生する組直接費と、共通して発生する組間接費に分けて計算します。個別原価計算に準じて、組直接費は各組製品に賦課(直課)、組間接費は適切な配賦基準に基づいて賦課します。その後は単純総合原価計算と同じ手順で月末完成品原価と月末仕掛品原価を計算します。

実際等級別原価計算は、サイズや品質の異なる製品を等級製品といい、完成品原価をまとめて計算したあとでサイズや品質などの違いに応じて各製品に原価を分けます。単純総合原価計算と同じ手順で完成品原価を計算したら、完成品数量に各等級製品の原価負担割合の等価係数を乗じて各等級製品ごとの原価である積数を求めます。

仕損とは、製造過程で加工に失敗し、不良品(仕損品)が生じることです。仕損品を合格品にするための補修費用は仕損品といいます。また、減損とは、液体が蒸発したり、粉末が飛び散ったりなど、原料が目減りしてしまうことをいいます。通常生じる程度の仕損や減損はそれぞれ正常仕損正常減損といい、通常生じる程度を超えて発生したもを仕損や減損はそれぞれ異常仕損異常減損といいます。正常仕損、正常減損は原価項目として、異常仕損、異常減損は非原価項目として処理します。

仕損費や減損費の負担には、正常仕損、正常減損の原価をそれぞれ正常仕損費正常減損費といいますが、それらを別個に計算せずに計算上無視する(個数は反映されるので原価は上がる)度外視法と、正常仕損費正常減損費を計算してから完成品や仕掛品を計算する非度外視法があります。仕損や減損の発生点が月末仕掛品の加工進捗度よりも後の場合、正常仕損費正常減損費は完成品のみに負担させます。仕損や減損の発生点が月末仕掛品の加工進捗度よりも前の場合、正常仕損費正常減損費は完成品と仕掛品の両者負担させます。また、加工進捗度が不明な場合は両者負担として計算します。

図表:度外視法による正常仕損・正常減損の処理

減損の場合は評価額はありませんが、仕損は場合によっては評価額(仕損品評価額)があります。その時の正常仕損費は仕損品の原価から仕損品評価額を差し引いて求めます。完成品のみ負担で仕損品評価額ありならば、完成品原価を計算した後、完成品原価から仕損品評価額を差し引くことになります。両者負担で仕損品評価額ありならば、完成品原価等を計算する前に仕掛品評価損を差し引きます。

なお、個別原価計算においては補修指図書に集計されて、直接経費として賦課します。

直接材料が加工進捗度によってその費用が変わる場合、それは①工程の終点で投入される場合、②工程の途中で投入される場合、③工程を通じて平均的に投入される場合に分けられます。①工程の終点で投入される場合は、全額完成品原価になります。②工程の途中で投入される場合は、加工進捗度の後ならば仕掛品原価と完成品原価に、加工進捗度の前ならば全額完成品原価になります。③工程を通じて平均的に投入される場合は、加工費に含めます。

標準単純総合原価計算は、あらかじめ目標となる原価の標準原価を設けて原価を計算します。図表のような流れによって、実際にかかった原価である実際原価と比べて、どこに無駄や非効率があったかを見つけ、必要な改善を行うために活用します。

図表:標準原価計算の流れ

  1. 原価標準の設定
  2. 標準原価の計算
  3. 原価差異の把握・分析
  4. 会計年度末において1年分の標準原価差異の適切な処理

標準原価の設定では、標準原価カードをまとめます。標準原価カードは、図表のように標準直接材料費標準直接労務費標準製造間接費を設定し、それらを足した金額が標準原価であるという構成です。

図表:標準原価カード

  • 標準直接材料費=標準単価×製品1個あたりの標準消費量
  • 標準直接労務費=標準賃率×製品1個あたりの標準直接作業時間
  • 標準製造間接費
    =標準配賦率×製品1個あたりの標準操業度
    =(1年間の製造間接費予算÷基準操業度)×製品1個あたりの標準操業度
    =(1年間の製造間接費固定予算+1年間の製造間接費変動予算)÷基準操業度×製品1個あたりの標準操業度
    =(変動費率+固定費率)×製品1個あたりの標準操業度

標準原価の計算では、製造データと、①でまとめた標準原価カードをもとに標準原価を求めます。

図表:標準原価の計算

生産データ:月初仕掛品20個(50%)、当月投入120個、月末仕掛品40個(50%)、完成品100個、直接材料はすべて工程の始点で投入、( )内の数値は加工進捗度を表すものとする。

原価差異の把握・分析では、実際原価も計算し、標準原価との差を検証、直接材料費、直接労務費、製造間接費のそれぞれで差異の原因を調べます。標準原価より実際原価の方が多ければ不利差異、少なければ有利差異です。直接材料費と直接労務費はボックス図を用いて標準と実際を、製造間接費はシュラッター・シュラッター図を用いて標準と実際と予算を比較します。ボックス図は、直接材料費の場合は縦軸に単価、横軸に消費量を、直接労務費の場合は縦軸に賃率、横軸に直接作業時間を取ります。図表のように、ボックス図に問題文からの情報を記入していきます。直接材料費は、単価に製品1個あたりの消費量を乗じたものであるので、価格差異数量差異に原因を分解することができます。標準単価より実際単価の方が大きいときは不利差異、小さい場合は有利差異、また標準消費量より実際消費量が多いときは不利差異、少ないときは有利差異です。なお混合差異については外部要因の大きい価格差異に含め、内部要因の大きい純粋な数量差異を明らかにして改善を図ります。直接労務費は、賃率に製品1個あたりの直接作業時間を乗じたものであるので、賃率差異時間差異に原因を分解することができます。標準賃率より実際賃率の方が大きいときは不利差異、小さい場合は有利差異、また標準直接作業時間より実際直接作業時間が長いときは不利差異、短いときは有利差異です。なお混合差異については外部要因の大きい賃率差異に含め、内部要因の大きい純粋な時間差異を明らかにして改善を図ります。

図表:直接材料費と直接労務費のボックス図

シュラッター・シュラッター図は、縦軸に製造間接費、横軸に操業度(直接作業時間)を取ります。図表のようにシュラッター・シュラッター図に問題文からの情報を記入していきます。製造間接費は、配賦率に製品1個あたりの操業度を乗じたもので、配賦率は予算を基準操業度で除したものであるので、予算差異能率差異操業度差異に原因を分解することができます。標準予算より実際予算の方が大きいときは不利差異、小さい場合は有利差異、標準能率より実際直接能率が大きいときは不利差異、小さいときは有利差異、標準操業度より実際操業度が小さいときは不利差異、大きいときは有利差異です。製造間接費の予算は、公式法変動予算により決定されます。公式法変動予算とは、操業度に比例して発生する変動費と操業度によらず一定に発生する固定費に分けることです。なお、直接作業1時間当たりの変動費は変動費率、固定費は固定費率といいます。そこから能率差異についても変動費能率差異と固定費能率差異に分けることもできます。

図表:製造間接費のシュラッター・シュラッター図

  • 予算不利差異=実際製造間接費-予算製造間接費
  • 操業度不利差異=固定比率×(基準操業度-実際操業度)
  • 変動費能率差異=変動費率×(実際操業度-標準操業度)
  • 固定費能率差異=固定費率×(実際操業度-標準操業度)

会計年度末において1年分の標準原価差異の処理には、シングルプランとパーシャルプランがあります。シングルプランは、仕掛品勘定の当月製造費用を標準原価で記入、原価差異は各原価要素の勘定で把握します。一般的には大量生産などの製造プロセスが安定していて、簡易的な原価算定を求める場合に採用します。パーシャルプランは、仕掛品勘定の当月製造費用を実際原価で記入、原価差異は仕掛品勘定で把握します。一般的には特注品生産などの製造プロセスが不安定で、原価算定に正確な結果を求める場合に採用します。なお、どちらの方法でも、製品勘定はすべて標準原価で記入します。

図表:シングルプランとパーシャルプラン

直接原価計算は、変動製造原価のみを製品原価として集計する計算方法です。固定費は製品の販売がないときも発生する費用であるため、これを分けることで生産・販売量と原価、利益の関係がわかりやすくすることが目的です。ただし、変動費と固定費の区別は経営者の恣意性が大きく、直接原価計算に基づいて作成された損益計算書は、外部報告用の財務会計ではなく、内部報告用の管理会計において利用されます。直接原価計算を管理会計に活用する手法の一つにCVP分析があります。CVP分析は、原価(Cost)、生産・販売量(Volume)、利益(Profit)の関係から分析することで、いくつ販売するといくら儲かるのかが分かります。図表のように、売上高と原価が一致する点を損益分岐点といい、それより多く売り上げると利益になります。

図表:損益分岐点図

直接原価計算の損益計算書は、製造原価と販売費をそれぞれ変動費と固定費に区別します。図表のように、売上高から変動売上原価を差引いたものが変動製造マージン、それから変動販売費を差引いたものが貢献利益、さらにそこから固定製造原価と固定販売費および一般管理費を差引いたものが営業利益となります。また、全部原価計算と部分原価計算(直接原価計算)の差額は、固定費調整によって一致させなければいけません。これは直接原価計算が固定費を無視して原価計算をしているためで、固定費調整は図表のように損益計算書上で計算されます。

図表:直接原価計算の損益計算書

  • 全部原価計算の営業利益
    =直接原価計算の営業利益+期末製品(仕掛品)に含まれる固定製造原価-期末製品(仕掛品)に含まれる固定製造原価

実際に売上高を試算する場合は、簡易版損益計算書を作成して行います。簡易版損益計算書は、変動費と固定費をそれぞれまとめたもので、図表のように、販売数量に文字を置き、損益計算書の計算過程から方程式を解いていくことで売上高を求めることができます。なお、売上高に対する損益分岐点からの余裕分の割合を安全余裕率といいます。

図表:売上高の計算

販売単価を@200、変動費率を@60、固定費合計額2,100円、販売数量をXとする。

直接原価計算では、原価の固変分解が必要です。固変分解とは原価を変動費と固定費に分けることで、費用ごとに分ける費用別精査法もありますが、図表のように、過去の生産データの最低生産量(最低点)と最高生産量(最高点)から求める高低点法がよく使われます。

図表:原価を変動費と固定費に分ける方法

最低生産量(最低点)が2個で1,300円、最高生産量(最高点)が8個で1,600円とする。

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