総論|人生・金融設計は「作って終わり」にできない
一度立てた人生・金融設計(ライフ・ファイナンシャルプランニング / life&financial planning)が、そのまま何年も通用することはありません。結婚、出産、転職、住宅購入。あなたの人生には、これから何度も「計画の前提」を揺さぶる出来事が訪れます。子どもが一人増えれば教育資金の必要額は変わりますし、転職すれば収入も、社会的資源として管理していた税金や社会保険の条件も変わります。
だからこそ、人生・金融設計は「作ること」よりも「作り直し続けること」に本当の価値があります。最初に立てた資源配分(リソースアロケーション / resource allocation)が現実とズレていないかを定期的に点検し、必要なら配分をつくり直す。この点検と修正のサイクルこそが、実践・改善の中心です。
とはいえ、「見直しましょう」と言われても、何を、いつ、どうやって見直せばよいのか分からなければ、行動には移せません。そこで役に立つのが、ライフイベント表とキャッシュフロー表という二つの道具です。あなたの将来の出来事を時間軸で並べ、収支の見通しを数字で表すことで、感覚ではなく事実に基づいて人生・金融設計を見直せるようになります。
各論|人生・金融設計を見直すための二つの道具
ライフイベント表で将来の出来事を並べる
ライフイベント表とは、あなたとあなたの家族に起こりうる出来事を、年ごとに一覧にした表です。就職、結婚、出産、子どもの進学、住宅購入、退職といった出来事を、今から先の年齢や年数に沿って書き出していきます。特別な出来事だけでなく、車の買い替えや旅行といった、ある程度予測できる支出のタイミングも一緒に並べておくと、後で見返したときに計画の解像度が上がります。
このライフイベント表を作ることの本当の意味は、未来を正確に当てることではありません。人生の節目でどれくらいのお金が動くのかを、あらかじめ自分の目で確認しておくことにあります。何も書き出さないままでは、教育資金や住宅資金といった将来的資源の必要額は、いつまでも漠然としたイメージのまま残ってしまいます。
キャッシュフロー表で収支を数字にする
ライフイベント表で将来の出来事を並べたら、次はそれをお金の流れに変換します。これがキャッシュフロー表です。現在の収入と支出をもとに、先ほど並べた出来事にかかる費用を年ごとに加え、貯蓄残高がどう推移していくかを数字で追っていきます。
キャッシュフロー表を作ると、感覚では気づけなかったことが見えてきます。たとえば、教育費が重なる数年間だけ貯蓄が大きく減る、あるいは想定していた資産管理の運用利回りが少し違うだけで、老後資金の到達年齢が数年変わる、といったことです。人生・金融設計における資源配分は、こうした数字の裏付けがあって初めて、実行に移せる具体的な計画になります。
実際の結果と当初の計画のズレを点検する
ライフイベント表とキャッシュフロー表は、一度作って引き出しにしまっておくものではありません。半年に一度、あるいは年に一度など、自分なりのタイミングを決めて、実際の収支や資産残高が、当初の計画とどれくらいズレているかを確認してください。
このとき大切なのは、ズレそのものを問題視しすぎないことです。転職で収入が増減する、想定より医療費がかかる、投資の運用成績が計画と違う。こうしたズレは、人生・金融設計を運用していれば必ず起こるものです。点検の目的は、ズレを責めることではなく、今の自分の位置を正しく知ることにあります。
ズレを踏まえて資源配分を修正する
点検の結果、計画と現実にズレが見つかったら、そこから資源配分を修正していきます。将来的資源への配分を増やすのか、生物的資源である健康管理により多くの時間を割くのか、あるいは個人的資源のスキルアップに資源を回すのか。修正の方向は、あなたが今どの資源に手薄さを感じているかによって変わってきます。
この「点検して、直す」というサイクルを繰り返すことで、人生・金融設計は一度きりの計画書ではなく、あなたの人生とともに育っていく仕組みになります。ライフイベント表とキャッシュフロー表は、そのための出発点であり、同時に何度でも立ち返るための道具でもあります。
