総論|配分ルールをどう位置づけるか
人生・財務設計、不確実性管理との違い
人生・財務設計(ライフ・ファイナンシャルプランニング / life&financial planning)は「何のために生きたいか」という目的を定める理論であり、不確実性管理(リスクマネジメント / risk management)は「起きてしまった事態にどう対応するか」を定める理論です。ここで紹介する配分ルールは、このどちらとも違います。目的も対応の方針も定まったあとに残る、「では実際に、どうやって配分を実行するか」という一点に答えるための、具体的な手法群です。目的を描くだけでは理想のまま終わり、対応策を用意するだけでは何も動き出しません。配分ルールは、収入や支出を確定させる手順を与えることで、この「実行の空白」を埋める役割を担っています。
配分ルールに共通する考え方
配分ルールと呼ばれるものは、本多静六の四分の一天引き貯金法をはじめ、数多く存在します。呼び方も割合の切り方も手法によって違いますが、根底にあるのはやはり「使った残りを貯めるのではなく、先に取り分けてから残りを使う」という順序の逆転、あるいは「使った金額を、あとから価値で仕分けて振り返る」という発想です。この考え方がどれほど広く使われているかを知ることで、それぞれのルールの立ち位置もより具体的に見えてきます。
代表的な配分ルールを見る観点
以下の各論では、本多静六の資産形成理論を出発点に、代表的な配分ルールを、何を基準に振り分けるか、どれくらい厳格か、どんな人に向いているかという観点で見ていきます。
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各論|代表的な配分ルールを知る
本多静六の四分の一天引き貯金法 — 割合を単純化した先取りルール
本多静六が実践したのは、通常の収入の4分の1と、臨時収入の全額を、生活費に回す前にあらかじめ貯蓄・投資へまわすという方法です。25歳からこの方法を続け、40歳を迎えるころには、東京帝国大学教授としての給与よりも、預金の利子や株式の配当のほうが多くなっていたと伝えられています。この方法の特徴は、割合をたった一つ、4分の1に単純化している点です。細かく用途を分けない分、続けやすく、判断に迷う余地もほとんどありません。取り分けた資金は複利で再投資に回し、値上がりした株式は2倍になった時点で半分を売却して元手を回収するという運用ルールとあわせて実践することで、増やすことと守ることを両立させていました。
50/30/20ルール — 使い道ごとに大枠を3つに分けるルール
50/30/20ルールは、手取り収入を、必需品に50%、欲しいもの・娯楽に30%、貯蓄や借入の返済に20%という3つの大枠に振り分ける配分ルールです。アメリカの家計管理の考え方として広まりました。本多式が「先取りする割合」だけを定めるのに対し、このルールは「使い道」そのものを大枠で管理する点が特徴です。生活費と娯楽費の境界があいまいになりがちな人にとって、まず大枠を3つに分けるところから始められる分、取り組みやすいルールだといえます。
消費・浪費・投資(支出3分法)— 使い道を価値で仕分けるルール
支出を消費・浪費・投資という3つの物差しで仕分ける考え方です。消費は生活に欠かせない支出、浪費はいわゆる無駄遣い、投資は貯蓄や自己投資など将来につながる支出を指します。50/30/20ルールが必需品・欲しいもの・貯蓄という使い道の大枠であらかじめ3分割するのに対し、こちらは同じ支出でも状況によって消費にも浪費にもなりうるという前提に立ち、金額ではなく価値観をものさしにして振り返る点が特徴です。理想とされる配分は消費70%・浪費5%・投資25%程度とされ、均等な3等分ではありません。すでに使ったお金がどれだけ浪費に偏っているかをあぶり出すための、振り返り向きのルールだといえます。
6つの瓶の法則 — 用途ごとに配分先を細分化するルール
6つの瓶の法則は、収入を必需品・娯楽・自己投資・自由のための資金・長期貯蓄・寄付という6つの用途に、それぞれおおよその割合で振り分けるという考え方です。用途ごとに配分先を細かく分けるため、貯蓄や自己投資に回すべき分が、生活費や娯楽費に紛れて消えてしまうことを防ぎやすくなります。本多式や50/30/20ルールに比べて区分が細かい分、管理の手間は増えますが、何にどれだけ使っているかを具体的に把握したい人には向いているルールです。
生活防衛資金の考え方 — 配分ルールの前提に置く守りの資金
生活防衛資金とは、投資や資産形成のための配分を始める前に、生活費の3か月から6か月分を、現金としてあらかじめ確保しておくという考え方です。本多式や50/30/20ルール、6つの瓶の法則が「どう振り分けるか」を定めるルールであるのに対し、生活防衛資金は「振り分けを始めてよい状態かどうか」という前提条件にあたります。収入が途絶えるなどの不確実性への備えという意味では不確実性管理の視点とも重なりますが、配分ルールを機能させ続けるための土台として、あわせて押さえておく必要があります。
